「もっともお手軽な過去を変える方法(2)(パラレルワールドはある?)」

2016/8/5

 

パラレルワールドイメージ

前回「もっともお手軽な過去を変える方法(1)」からの続き。

夢の中でタイムリープする方法を考察するにあたり、不思議.netの記事、ミチオ・カク博士「デジャヴはパラレルワールドからの情報」を手がかりとして検証を進めていく。


※デジャブは、「はじめて体験する出来事に、以前どこかで経験したことがある」と感じたり、「はじめて訪れた場所なのに、前に来たことがある」と感じたりする既視感覚のこと。

「このシーンは以前夢で見たことがあるぞ!」という不思議な感覚を私も幼い頃に経験したことがあるが、元記事の米テキサスA&M大学の調査では、デジャブは約70%の人が人生の中で一度は経験しているそれほど珍しくない現象らしい。

同大学のミシェル・ホック助教授は、脳の情報処理におけるタイムラグ(エラー)によって、現在の体験の一部を過去の体験と錯覚してしまうという脳科学的アプローチから説明する。

カク博士はまったく違うアプローチで、デジャブを量子物理学におけるパラレルワールド(多元宇宙)から説明する。カク博士によるとデジャブは周波数のエラーによって、パラレルワールドを垣間見たせいだという。

パラレルワールド説は、脳のエラー説にくらべて、一般的には受け入れにくいかもしれない。

そもそもパラレルワールドとは何なのか?

いま我々が住んでいる宇宙とは別の、並行して存在する可能性のある宇宙のことで、我々の宇宙とは物理法則からまったく違う宇宙もあれば、人類が存在し、我々と瓜二つの人間が地球で生活している宇宙もある。

例えば、そのよく似た宇宙が時系列的に我々の宇宙より少しだけ未来の時間を進んでいるならば、その宇宙(パラレルワールド)を垣間見ることができれば、我々の世界の未来(またはその可能性)を知ったことになる。

つまり前回、夢の中でタイムリープした事例を説明するために3つの仮説を立てたが、この中の、
 
(C)夢の中で(過去のような)並行世界の自分の人生を体験し、その記憶を持ったまま目覚めた。
 
を、夢の中でパラレルワールドとして未来の人生を大人になるまで体験し、現実の世界で中学生として目覚め、その記憶を元にもう一度人生をやり直しているとすれば、ある意味で過去を変えられたと言い換えることができるだろう。


とすれば、次のような論理が成り立つ。


(1)パラレルワールドが存在すると仮定し、
 
 ↓
 
(2)夢の中で未来のパラレルワールドを自分の意思で見ることができ、

 ↓

(3)その記憶をもったまま目覚めることができれば、過去を変えることができる。


そこでまず(1)のパラレルワールドが存在する可能性をさぐっていこう。そもそもパラレルワールドという考え方はどこから来たのだろうか?

量子の不思議な性質「物質は波であり、粒子である」の説明として、物質は観測されるまでは波のように確率的に広がっており、観測してはじめて1点の粒子に収束する(デコヒーレンス)というコペンハーゲン解釈の考え方が一般的だった.

オーストリアの理論物理学者シュレディンガーは、猫の実験で有名な「観測する前の1匹の猫が、生きている状態と死んでいる状態で同時に存在しているのはおかしい」と批判した。

シュレディンガーの批判を解決するために、プリンストン大学の学生だったヒュー・エヴェレットは、観測前の物質が波で表現されるのならば、人間も(もちろん物質でできているのだから)波で表現されるはずだ。電子の波を人間が観測すると、人間も波となってさまざまな確率として広がっていくのではないか、という論文を発表した。

つまり観測した時点で、猫が生きている世界と死んでいる世界に分岐していくという多世界解釈である。

エヴェレットの多世界解釈はその後、「理論として可能性のある複数の宇宙が存在する」という多元宇宙論に発展していき、マサチューセッツ工科大学の物理学者マックス・テグマークはレベル1から4までの4段階で多元宇宙を分類した。レベルがあがることに、前の段階の多元宇宙を内包していく(レベル2はレベル1の上位概念である)。

<レベル1>
宇宙に果てがあるのかはわかっていない、というのもわれわれが天体望遠鏡で観測できる範囲には限界があるからだ。観測の範囲外(宇宙の地平線の外)にも別の宇宙が存在しているはずだ。あまりに遠いので交流することはできないが、物理法則は同じである。

<レベル2>
宇宙のはじまりには真空の相転移が起こり、急速に膨張してビッグバンにつながったとするインフレーション理論が考えられている。インフレーション時には急速な膨張によって局所的にいたるところに泡宇宙が生み出される。泡宇宙はアインシュタイン-ローゼンブリッジ(いわゆるワームホール)によって元の親宇宙とつながっているが、やがて切り離されてしまう。切り離された泡宇宙はブラックホールの特異点の向こうにあり、親宇宙と連絡をとるすべもなく、物理法則も違うはずだ。

<レベル3>
エヴェレットの多世界解釈によって生み出される観測ごとにいくつもの分岐した宇宙にわかれていく並行宇宙(パラレルワールド)。

<レベル4>
レベル1~レベル3までを含み、あらゆる数学的可能性によって記述される多元宇宙。


この他にカク博士が創始者の一人である超弦理論によって生み出される多元宇宙もある。

超弦理論は「時間とは-ホログラフィー原理(2)」で説明しているが、物質の最小単位を1本の振動する「ひも」とし、このひもの振動する周波数の違いが世の中に存在する光子などのさまざまな素粒子に対応するという理論だ。

超弦理論によればこの宇宙は3次元ではなく、9次元(時間を加えると10次元)であり、3次元以外の6次元は余剰次元として小さく巻き込まれている(我々は3次元しか認識できないので観察することができない)。

この超弦理論は考え方の違いにより5つの説があるが、さらに1次元の膜(ブレーン)を加えて11次元にすると統一できることがわかり、この理論をM理論という。

ひもの両端はこのブレーンにくっついており離れることができない。つまりわれわれは1枚の膜の中(ブレーンワールド)に住んでいるとされる。そしてわれわれには認識できない余剰次元の中を漂っている。

余剰次元にはわれわれのブレーン以外にもさまざまなブレーンワールドが存在し、その一つ一つが並行宇宙である。

中にはブレーンとブレーンの距離が(けっして認識はできないが)ごく近くにあり、唯一余剰次元の間を移動できる重力によって相互作用する場合もある。

カク博士が「デジャブは周波数のエラーによって、パラレルワールドを垣間見たせいだ」というのは、量子状態にある物質が何らかの要因でデコヒーレンスを起こし、現在の世界の波動状態が弱まって重力の相互作用により他のブレーンに干渉した結果だと説明できる。

したがって今まで考察してきた中では、このブレーンのパラレルワールドが、夢の世界で相互作用できる可能性が一番高いだろう。

パラレルワールドの検証の次は、(2)の自分の意志で夢をコントロールする方法と(3)の夢の記憶をもったまま目覚める方法を考えてく。

次回のキーワードは「明晰夢」だ。