2016/10/14
※今回は大ヒット中のアニメ映画「君の名は。」をテーマに選びました。タイトルの○○○○は映画の核心部分に触れているので伏字にしています。「君の名は。」は事前に情報を知らない方が楽しめるので、まだご覧になられていない方はご注意ください。
現時点(2016年10月中旬)で興行収入130億円を突破し、まだまだ勢いの衰えない「君の名は。」だが、この物語は表のテーマ「男女の入れ替わり」に対して、「過去改変」が裏テーマとなっている。
すでに映画をご覧の方を対象として書くので、あらすじや登場人物の解説などは雑誌や他サイトをご覧いただくとして、「過去に戻る方法」や「過去を変える方法」がテーマのこのサイトらしく、「過去改変」にしぼって考察していく(夢の中で男女がどうやって入れ替わるのかも省く)。
さて、この映画で描かれている「過去改変」は、3年前の彗星の落下で壊滅した町とそのときに死んでしまったヒロインを、現在にいる主人公が夢の中のでの入れ替わり現象を通じて情報を伝え、その情報を元に過去の世界のヒロインたちが協力して町の人を彗星落下から救うというもの。
ヒロインである三葉の立場で説明すると、3年先の未来からの情報を元に迫る危機を回避していくというやり方だが、私が知る限りこのような時間のギミックを使った映画はなかったように思う。少し似ているのはジョディ・フォスター主演のSF映画「コンタクト (字幕版)」 。こちらははるか彼方の星から信号にのせて送られてきた設計図を元に空間移動装置を完成させる。
いずれにせよこの映画で描かれている過去の改変は、いままでにこのサイトでご紹介してきたようなタイムトラベルやタイムリープとは異なる。
なぜなら三葉や主人公である瀧は過去や未来に移動しない。
かわりに夢をきっかけとした二人の入れ替わり現象が、3年前の田舎町と現在の東京という2つの時空を結び付ける。無理やり名付けるならば「タイムリンク」とでも呼ぼうか。
このサイトでもいろいろ検証してきたが、そもそも「生身の体のまま過去へ戻ったり」、「過去を変えてその影響を享受したまま元の未来に戻る」ことは現在の物理理論では非常に難しい。
ただし可能性はある。その1つが「未来からの情報を何らかの方法で入手し、その情報を元により良い現在を選択していく」という方法だ。
たとえば「もっともお手軽な過去を変える方法(3)(明晰夢で現実を変える)」で紹介した「明晰夢で未来のパラレルワールドを垣間見て、その経験を元に現実を変えて生きていく方法」だ。
今の段階では明晰夢を見ることは個人的な能力に左右されてしまう。
しかし、例えば上の記事のドイツ研究チームが開発している「前頭葉の外部からの電気刺激によって明晰夢へ誘導するマシン」が完成すれば、誰でも自由に明晰夢を見ることが可能になるかもしれない。その装置を使って何千何万というデータが蓄積されていけば、明晰夢で見た未来のパラレルワールドの情報と実際の出来事が一致するケースが発生してくる可能性もある。そうなればこの方法も夢物語ではなくなるだろう。
さてタイムリンクを実現する可能性がもう1つある。それが「タピオカ理論(4)(質量のある光をまとってGO!)」で紹介したマレット博士のタイムマシンだ。彼のタイムマシンが現在稼動しているならば、いずれ未来から送られてきた「未来の情報」が詰まった通信を「現在」で傍受できるかもしれない。その通信を解読することができれば、その内容を参考にして、われわれがよりよい「今」を選択していくことができるだろう。
新海監督はこの映画を完成させるのに相当の年月と努力を費やしたそうだ。
「君の名は。」を単なる男女の入れ替わりものに終わらせず、画期的なタイムリンクのアイデアを採用し、しかもそれを一般の人にもわかりやすく描き出したことは、ほんとうに素晴らしいと思う。