2022/11/12
今回は、自我の発生する仕組みを「唯識」という仏教の考え方から考察する。
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「唯識」を調べてみようと思ったのは、私のYouTubeのコメント欄に寄せられた投稿「一人一宇宙」という言葉がきっかけだ。
私が相対性理論や量子力学、ユングの集合的無意識などを考察してたどりついたのは「自我と呼ばれるわれわれの意識が、一人一人それぞれの時間にそれぞれの宇宙を観測している」という結論だ。
「一人一宇宙」という言葉はまさにそれを象徴しているように思えた。
この「一人一宇宙」は仏教学者で立教大学名誉教授の横山紘一氏が紹介されている考え方で仏教の「唯識」という思想に基づいている。
唯識は4世紀ごろインドで誕生し、7世紀に西遊記の三蔵法師のモデルになった玄奘三蔵という僧が中国に持ち帰った思想だ。日本には8世紀、奈良時代に伝わった。
唯識では、一人一人が認識するこの世界が8種類の「識」によって成り立っていると考えられている。
これが8種類の識を図にしたものだ。
この八識の三角形は大きく上と下で意識と無意識に分かれる。
上の右側は、視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚というわれわれの五感に相当する。
上の左側は、自覚的意識、自我で6番目の識だ。
下は「末那識(まなしき)」とさらに深い「阿頼耶識(あらやしき)」に分かれる。
「末那識」は、寝ても覚めても自分に執着する心。睡眠中は上の6つの意識は停止するが、末那識以下は活動している。
そして最深部の「阿頼耶識」が上の7つの識を生み出し、7つの識に作用して自分の体やこの世界が存在すると認識する。
仏教心理学者の岡野守也氏は著書「唯識の心理学」の中で、この八識と20世紀を代表するフロイトやユングの心理学との対応を紹介している。
確かに八識図はユングの意識の図と似ている。
ユングは人の意識を、その深さで3つのレベルに分けた。
私を私だと感じる表層的な「自我」、その奥にある「個人的無意識」、さらにその奥にある人類に共通する先天的な意識「集合的無意識」だ。
唯識の八識図で言えば、自我が上の6つの識、個人的無意識が末那識、集合的無意識が阿頼耶識に相当する。
なぜ阿頼耶識が人類共通の集合的無意識に相当するのか?
唯識では、われわれがなぜ他人と共通の客観的な世界があるように感じるのかについて、他人の阿頼耶識の中に自分と共通する「種子(しゅうじ)」があるからと説明する。
「種子」とは、人が話したり考えたり何かの行動をするとき記録されるもので、それが阿頼耶識にたくわえられる。阿頼耶識の「阿頼耶」は「蔵」という意味だ。
ユングも神話や伝説など、人類の心の中に過去から受け継がれてきた共通するイメージを「元型」と呼び、元型は集合的無意識から形作られると考えた。
これに似た考え方が最新の科学理論にもある。
2020年にノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ペンローズ博士は、脳がニューロンなどの分子的な活動以外に量子的な活動をしていて、そこからわれわれの意識が生まれるという「量子脳理論」を提唱している。
ペンローズ博士は実際に量子的な活動をしている器官として、脳の神経細胞にある微小管をあげているが、この微小官の量子的な働きによって脳以外の場所にも記憶が保存される可能性がある。
その記憶の保存先が「宇宙の果ての地平面」だ。
これは物理学で、3次元空間の情報がその1つ下の次元の境界にある2次元平面に蓄えられるという「ホログラフィー原理」を元にしている。
つまり物理学でも唯識でも、われわれの意識の元がどこか共通の場所に保存される可能性があるのだ。
ここから「自我の発生する仕組み」を唯識から考察する。
唯識では、阿頼耶識に蓄えられた種子の影響力と8つの識の働きで、私がいて他人がいてこの世界があるように見えているという。
われわれは昔、他の動物と同じように末那識や阿頼耶識・・・つまり無意識だけで行動する存在だった。
けれども進化の過程で言葉でのコミュニケーションや文化を育み、種子がたくわえられ、その影響で自分と他人との違いに気づき「自我」という概念を作り上げた。
私は最初、唯識とは「ただ意識だけがある」、「人の心がこの世界を作り出している」という意味だと思っていたが、違った。
唯識では心とか物とかの区別は最終的に無くなる。
主観や客観は根源的なものではなく「八識の働き」で作られた実体のないもの・・・唯識ではそれを「空(くう)」(色即是空)と表現する。
これは「何もない」ということではなく、この世界は「識との関係性」でできているという意味だ。
ニューヨーク大学のデイビッド・チャーマーズ博士はこの「空」とよく似た「情報の二相理論」という考えを主張する。
「情報の二相理論」では、この世界の根源的なものは関係性・・・つまり「情報」で、情報からわれわれの意識やこの世界を構成する物質が作られるという。
唯識を先ほどのホログラフィー原理と組み合わせて考えると、末那識や阿頼耶識から生まれた自我が6つの識で宇宙の地平面を観測したとき、量子もつれによってこの3次元世界が構築される。
この世界は宇宙のはるか彼方の地平面から投影された「空」、つまりホログラムなのだ。
実は2022年9月に実施したタイムリープ実験4で、この仮説の片鱗、ユングの集合的無意識、唯識でいえば阿頼耶識の影響と思われるデータが得られた。
※「タイムリープ実験」とは、意識だけが体を離れ、過去や未来へ時間移動する「タイムリープという現象を意図的に起こすことができるか?」を検証する実験。
タイムリープ実験4の実験結果がこちら。
タイムリープ実験4の後「集合的無意識」の影響が無い状況、つまり実験を行っていないときの夢に関するアンケートをツイッターで募集した。
10月9日、満月の前日に取ったアンケートがこちら。
10月25日、新月に取ったアンケートがこちら。
この2つのデータをタイムリープ実験4の夢のデータと比べると、
「普通の夢だけど、過去や未来の夢を見た」が満月比+1.5%、新月比+2.1%。
「明晰夢を見た」が満月比+2.9%、新月比+6.6%。
「明晰夢で過去や未来の夢を見た」が満月比+5.4%、新月比+4.3%。
いずれも集合的無意識がプラスに影響したと思われる結果が得られた。
ただ本当に集合的無意識がプラスに働くと断言するには、実験の参加者が増えるごとにこれらのデータがさらにプラスに影響しなければならない。
これからもタイムリープや意識の考察を続けていく。