●「過去を見るタイムマシンの作り方(3)(クォンタム・アクセス )」

2017/3/23

 

ホログラフィー観測イメージ

1ヶ月前の記事「過去を見るタイムマシンの作り方(1)(クロノバイザー )」「過去を見るタイムマシンの作り方(2)(6次元理論の応用 )」で、バチカン市国にあったとされる過去を見ることのできるタイムマシン「クロノバイザー」を紹介したが、先日トカナに追加情報が掲載された。

 

●遂にバチカンがタイムマシン「クロノバイザー」の存在を公表か!? CIAとMI6も基幹技術入手、海外紙複数が報じる

2017/3/20 トカナより

 

記事によるとイギリスの「The Daily Star」や「EXPRESS」などの一般的なタブロイド紙でクロノバイザーの存在が報じられた上、その根幹を成す技術を「クォンタム・アクセス」と呼んでいる。

 

この「クォンタム・アクセス」技術は、バチカンから、CIAやイギリスの情報機関であるMI5MI6に技術供与され、それを発展させたシステムが今でも秘密裏にそれぞれの組織で利用されているという。

 

しかし、トカナでは「クォンタム・アクセス」がいかなるものか、具体的には説明されていない

 

前回の考察では、クロノバイザーの原理(仮説)として、光が通る時間軌道を余剰次元方向に反らすことで、対象物からレンズまでの到達時間を伸ばし、過去を観測するという方法を紹介した。

 

簡単に説明すると、われわれが夜空の星を見るとき、星の光が地球に到達するまでには時間が経過しており、輝く星たちは過去の姿である。

何らかの方法で対象物までに届く光の距離を伸ばすことができれば、対象物の過去の姿を観測できるかもしれないという方法だ。

 

だが、トカナの記事を読むと、どうやらクロノバイザーの根幹を成す技術はこの方法ではないらしい。

 

では「クォンタム・アクセス」とはいかなる技術か?

 

「クォンタム・アクセス」という言葉から推察すると「クォンタム(quantum)」から量子のイメージと、それにアクセスするのだから、量子エンタングルメント、いわゆる量子もつれに関係があると想像される。

 

量子もつれを利用して過去の光景を観測する(記事には未来も観測可能と書かれていが)手段というと、思い当たるのが過去を変える方法で紹介したホログラフィー原理だ。

 

ちょうど先日読んだ日経サイエンスで、ホログラフィー原理に関連した「時空が量子もつれの相互作用から生まれる」という理論の特集を見つけた。

 

●量子ビットから生まれる時空  

日経サイエンス2017年4月号より

 

この特集では、時空量子のもつれから形成されているという理論を、一般相対性理論や超弦理論を研究する物理学者と、量子コンピュータを扱う量子情報の研究者とが共同で研究するプロジェクト「IFQ」が紹介されていた。

 

今回はこの記事を元に「クォンタム・アクセス」技術の正体を紐解いていきたい。

 

 

まずプロジュエクト名の「IFQ」は、「It from Qubit」の略称で、「I(it)」は時空を指し、それが「Q( Qubit)」という量子スケールの最小情報単位「量子ビット」から形成されるという研究内容から名付けられている。

 

IFQプロジェクトの最終目標は、一般相対性理論と量子力学を統一する「究極理論(量子重力理論)」である。

 

IFQの研究は、何もないと考えられた空間が、実際には小さな情報で構成されており情報が相互作用しならがら時空を形成するという最新の量子重力理論に基づいている。

 

この研究の基礎となったのが、3次元の立体図形の情報がキラキラ光る2次元のホログラムに記録されているように、空間の体積のような3次元の情報を,その境界面にある2次元の物理法則で記述できるというホログラフィー原理だ。

 

例えばブラックホールの中のような極端に重力の大きな場所では、時空の曲率が大きくなり一般相対性理論が破綻してしまう。

 

アメリカの理論物理学者フアン・マルダセナ教授は、ブラックホールの中で何が起こっているのかを説明するために、ブラックホールのように曲がった3次元の時空で起こる現象を、その境界にある事象の地平面のような2次元で記述できるアプローチを考えた。

そして物質の最小単位を「点」ではなく「ひも」だととらえる超弦理論ホログラフィー原理を応用することで、重力はひもの振動として記述できると予想した(AdS/CFT対応)

 

実際にマルダセナ教授が予想した「ブラックホールの質量と温度の関係のコンピュータでの計算値」が、「超弦理論における重力の量子力学的な効果の近似計算結果」と一致することが確認されている。

 

●ブラックホールを記述する新理論をコンピュータで検証

京大と茨城大の共同研究論文より

 

さてマルダセナ教授のAdS/CFT対応の優れた点は、量子重力理論のような重力を含んだ複雑な計算を、次元を1つ下げることで、重力を含まない比較的簡単な理論で計算できることである。

 

IFQではこれを応用して、3次元の情報を2次元境界面に格納された量子ビットにエンコードする研究をしている。 

 

IFQプロジェクトの最大の特徴は、物理学者だけでなく、量子コンピュータが専門の量子情報理論の研究者が加わっていることだ。

 

これにより、「情報が量子スケールでどのように蓄積され、情報が時間と空間にどのように相互作用するのか」、また、私たちが生きている宇宙から単純化された宇宙の「トイモデル」をシミュレートすることで、「宇宙に隠された基礎的なコードを発見することができるのではないか」と期待されている。 

 

日経サイエンスの記事によると、2013年にマルダセナ教授とサスキンド教授は、量子もつれ状態にある2つのブラックホールはワームホールとなる「ER=EPR」説を発表している。

 

また、ワームホールを量子回路と考えることによって、ワームホール内の時間を測定することもできる

 

さらに量子もつれを利用すれば、量子メッセージをある場所から別の場所へ送信するだけでなく、原理的には過去から未来へ送信することも可能だという。

 

●「量子もつれは時間も超越」

2011/1/24 WIRED.jpより

 

 

ホログラフィー原理は、ブラックホールだけでなくこの宇宙全体が、はるかかなたにある境界面(事象の地平面)に描かれた2次元の情報の投影にすぎない可能性も示唆している。

ホログラフィー原理イメージ
ホログラフィー原理

 量子もつれ(もしくは量子コンピュータ)を利用した、われわれの3次元宇宙の情報が蓄積された2次元の事象の地平面の観測、それがクロノバイザーの原理の根幹を成す「クォンタム・アクセス」なのかもしれない。

 

 

さて、「過去を変える方法(2)」ではこれを利用して、量子コンピュータで事象の地平面を観測し、これから起こる未来の出来事をシミュレーションすることができれば、その情報を元に自分の人生にとって有意義な選択をすることができ、人生を変えることができるかもしれないという仮説を立てた。

 

もちろんこのようなことが可能になる未来はまだまだ先だが、想像するだけでもワクワクする。