●時間とは-ホログラフィー原理(1)

2016/5/31

まずなぜ「時空が量子のもつれから形成される仕組みを解明」したという大栗教授らの研究に素人の私が興味をもったのかというと、単純にまとめサイトなどで「タイムマシンの基礎理論になるかも?」と宣伝されていたからだ。

時空というのは3次元の空間と1次元の時間と合わせたものであり、タイムマシンには時間はもちろん空間の操作も必要だ。なぜなら地球は太陽のまわりを公転しており、太陽系もこの銀河の中を常に移動し、この宇宙自体も膨張しているから、今いる座標のまま過去にもどってしまうと、宇宙空間に放り出されてしまう。

だから量子もつれを操作できればタイムマシンがつくれちゃうんじゃないか?というのが2ちゃんのまとめサイトの意見。でもやっぱりそんなに簡単じゃない。

まず量子のもつれとは何か?

量子は光や電子などの極小さな粒子をまとめた呼び名だけど、この量子はいろいろ変わった性質をもっていて、回転する向きが上向き下向きの両方重ね合わせの状態になっており、観測してはじめて(人が見るという意味だけでなく他の物質との相互干渉によって)はじめて向きが確定したり、またそれぞれに反対の向きのペア粒子を用意して、2つの量子を遠く離れた場所に離し、1つの量子の状態を観測すると、瞬時にもう一方の量子の向きが決まってしまう性質がある。これを量子もつれ(エンタングルメント)という。

不思議なのは、月と地球とかはるかに離れた距離でも片方の量子からもう一方の量子に瞬時に情報が伝わるので、光速を超えるものは存在しないという特殊相対性理論と矛盾しているようにも思われる。実際には赤い糸で結ばれた(一般的な)恋人同士のように一方が男だとすれば片方は女という相関関係の状態(一方がわかれば他方の可能性は排除される)にあるだけで、光速を超えているわけではないらしいけど。

さて、ここでブラックホールの登場だ。ブラックホールはこれ以上超えると元に戻れなくなる境界(事象の地平面)をもっている。それで昔はこの事象の地平面を超えると人や物質やそれがもつ情報(エントロピー)も特異点に飲み込まれて消えてしまうと考えられていた。これはエントロピー増大の法則に反して、減少するじゃんと問題になったが、べケンスタインという人が、ブラックホールを囲む事象の地表面の表面積が時間がたつごとに増加することに注目し、エントロピーは特異点に飲み込まれるものもあれば、外にとどまるものもあると主張した。最初はよく理解されなかったが、かの有名なホーキング博士がホーキング放射を発見した。

量子論によると、空間は何もないのではなく実は量子場のゆらぎによって粒子と反粒子が対生成と対消滅を繰り返している(生まれてはすぐ消えるので何もないように見える)が、ブラックホールの事象の地平面では、空間と時間がひどくねじれているせいで、片方は中に吸い込まれ、相方は外へ放り出されるという現象がおこる。放射するということはエントロピーがあり、エントロピー増大の法則は破られていない。

さらにホーキング博士はブラックホールに含まれている情報量(エントロピー)がその中の体積ではなく、事象の地平面の面積に等しいことを示した。簡単に言うとブラックホールに飲み込まれた物質がもっていた情報は特異点に飲み込まれず、事象の地平面に蓄積されていたのだ。

実はこれはある事実を導く。ある空間内の情報は、エントロピー増大の法則によりどんどん増えていくが、その情報量が空間を囲む表面の面積よりは常に少ない。でもついにその許容量を超えてしまうと、その空間はブラックホールになってしまうのだ。そして言い換えれば、空間(3次元)の情報は、それを囲む表面(2次元)に蓄えられているということになる。これをキラキラ光る2次元の画像にレーザーをあてると3次元の像が浮かび上がるホログラムに例えて、ホログラフィー原理という。

さてこのホログラフィー原理、どんなことに応用されるかというと、超弦理論である。長くなったので次回に。