2018/1/13
昨年(2017年)秋、おもしろそうな記事を見つけた。
The Reality of our Holographic Universe and Astral World: A Never Ending Cycle!
2017/10/4 UFO Sightings Hotspotより
2017年1月機密解除されたCIAの文書の中に、アメリカ陸軍がアストラル・プロジェクションという体外離脱体験(身体から意識が離れて時空を旅する体験)について研究していたレポートが見つかったという。
「アストラル界」や「体外離脱」といえば代表的なオカルト用語なので、これだけならスルーしていただろう。
だがこの記事には「過去や未来に旅する」という言葉と、「宇宙はホログラム」という言葉が含まれていた。
「ホログラフィック宇宙」(ホログラフィー原理)といえばこのサイトでも「時間とは-ホログラフィー原理(1)」をはじめ何回も考察してきたテーマで、最新の宇宙物理学でも真剣に検討されている仮説である。
しかもこの記事を読んでみると、「リモート・ビューイングで過去を見る方法(1)」で取り上げたCIAが研究していたという「リモート・ビューイング実験」も関係しているらしい。
「リモート・ビューイング」は、日本語にすると「意識を身体から切り離し、時空を超えて対象を観察する方法」で、記事にあった「アストラル・プロダクション(体外離脱体験)」と定義上よく似ている。
「意識と身体を切り離す方法」や「意識は身体から独立して実在できるのか?」は「リモート・ビューイングで過去を見る方法(5)」でいろいろと考察しているのでそちらをご覧いただきたいが、暫定的に「ホログラフィー宇宙における事象の地平面を観察(クォンタム・リバース・アクセス)」することができれば可能かもと結論づけた。
肝心の機密解除されたCIA文書は29ページ、文字数にして80,000字(400字詰原稿用紙なんと200枚!)もあり、簡単には訳せそうにない。
なのでこの文書のタイトル「Analysis and Assessment of Gateway Process(ゲートウェイ・プロセスの分析と評価)」から、「Gateway Process」というキーワードを頼りに実際にCIAライブラリーを検索してみた。するとたくさんヒットし、その中でも「secret」と記載された文書を見つけた。
※CIAのファイルサーバーの問題で見られない場合は、下記からダウンロード。
文書2ページ目の3.e「s/noforn(米国の情報機関以外は閲覧不可)」の項目に、「リモート・ビューイング」の実験中に被験者が理想的な精神状態を保つために、「モンロー・テープ」を使用するための申請について記載されている。
「モンロー・テープ」とは何かと調べたところ、アメリカの超心理学者ロバート・モンロー(wiki)が1971年に創設した「モンロー研究所」で開発された、「ヘミシンク」という瞑想のための音響技術のテープのことだった。
●モンロー研究所について
この文書を書いたとされる米陸軍のウェイン・マクドネル氏についても調べてみた。
ウェイン・マクドネル(Wayne M. McDonnell)はINSCOM(アメリカ陸軍情報安全司令部)のLTC(中佐)として、名簿にも確かに名前が記載されている(5ページ目)。
※CIAのファイルサーバーの問題で見られない場合は、下記からダウンロード。
さらに調べる過程で、この文書について取り上げた「Motherboard(アメリカの未来テクノロジーなどを紹介するWEBマガジン)」の記事を見つけた。
●The US Army Funded Astral Projection and Hypnosis Research in the
80s
2017/7/22 Motherboardより
UFO Sightings Hotspotの記事以上の情報が記載されているので、こちらを紹介したい。
記事の筆者キャロライン・ハスキンズ(アメリカの科学技術ジャーナリスト)によると、米軍は1970年代後半から80年代にかけて超心理学に興味を示し、「プロジェクト・センターレーン 」と呼ばれた計画の元、1983年6月、米陸軍マクネドネル中佐に「モンロー研究所」が提供する「ヘミシンク」というサービスの評価を命じた。
マクドネル中佐はこの命により、バージニア州にあるモンロー研究所で、7日間のプログラムを体験した。
中佐はこのプログラムで得た経験を陸軍フォーマットで29ページの報告書(以下「マクドネル・リポート」と呼ぶ)にまとめている。
※CIAのファイルサーバーの問題で見られない場合は、下記からダウンロード。
マクドネル・リポートによると、モンロー研究所では、意識・エネルギー・時空間・量子をより大きな概念からとらえており、それは「アストラル・プロジェクション」とよばれ、アストラルと呼ばれる2次元(平面)に意識を運ぶことを目的としている。
マクドネル中佐は(ヘミシンクの利用によって得られる)催眠の本質を説明するために、モンロー研究所のメリッサ・ジャガー氏の比喩を引用している。
通常の意識状態はランプのように混沌として支離滅裂に光を放射している。しかし催眠状態の意識では、思考とエネルギーがレーザービームのように収束された光となる。
筆者のキャロラインがマクドネル・リポートから抜粋した概念図
※日本語注釈は私(BTTP)がつけたもの
マクドネル中佐は個人的な見解としながらも「ヘミシンクによる催眠とアストラル・プロジェクションは実用性と専門性を兼ね備えており、合理的な期待の範囲内にある」と述べ、米軍にとって利用価値があると結論づけている。
他にもCIAの機密解除した陸軍のファイルによると、1978年12月から1979年1月にかけてINSCOM(米陸軍情報保全司令部)からIGFP(INSCOM GRILL FRAME
PROJECT)という計画の元、諜報官の中から251人の候補者が選出され、そのうち117人が超心理学についての面接を受けた。
※CIAのファイルサーバーの問題で見られない場合は、下記からダウンロード。
SRIインターナショナル(旧スタンフォード研究所)から提供されたデータに基づいて面接が実施された。超心理学の軍事利用に反対だったり、オカルトファンや超心理学信奉者などの傾向は最終選考には考慮されなかった。
117名のうち7名がナンセンスだとか信仰上の理由で批判的だったが、110名(94%)は超心理学とその軍事利用に好意的な意見をもっていた。
マネジメント的にもう少し人員を絞り込む必要があり、知性や性格などの才能を考慮して最終的に30~35人の人員が選出された。
1983年11月10日に「RAPT(Rapid Acquisition Personnel Training)」という訓練がモンロー研究所で実施された。
選ばれた諜報官たちは 「ヘミシンク」をオーディオで聞き、その後、モンロー研究所の研究員によってアストラル2次元に誘導された。
精神空間では、諜報官は感覚を高めたり、体を癒したり、過去または未来に旅したり、肉体的な制約無しに現実世界のジレンマを解決することができたといわれている。
また、筆者によれば「リモート・ビューイング」と呼ばれる別の技術が、政府機関で採用されていたという 。
※これはまさしく「リモート・ビューイングで過去を見る方法(1)」で取り上げたリモート・ビューイングで過去の火星を遠隔透視するスターゲイト計画のことである。
筆者のキャロラインはへミシンク技術に関する情報を得るためにINSCOM(米陸軍情報保全司令部)の代表者ロン・ヤング氏にコンタクトをとったが「要求された技術に関する情報の記録はない」とメールで回答されたそうだ。
その中でヤング氏は、マクドネル・リポートの冒頭に記載されているAOG(米陸軍運営グループ)が1995年に解散された後、モンロー研究所に関連するすべてのファイルがAOGを吸収した別の機関に移管されたが、どの機関がAOGを吸収したのかは教えてくれなかった。
「CIAがAOGを吸収したのか?」、「なぜCIAがモンロー研究所に関連する書類を所持したのか?」について、CIAに連絡したものの、こちらも情報を得ることはできなかった。
筆者はモンロー研究所に繰り返しコメントを試みたが、エグゼクティブ・ディレクターのナンシー・マクモネグルは以前の米軍との関係について語ろうとしなかった。
しかし、そのウェブサイトではその関係について公然と記載されている。
モンロー研究所の人事管理アナリスト、レイ・ウォルドコッターは、 1991年秋のヘミシンクジャーナルで、軍がヘミシンク技術の使用をレビューしたと書いている。
ウォルドコッターによると、陸軍では、ストレスの低減、心理カウンセリング、さまざまなレベルの人材の学習能力強化、幹部職を希望する人材の訓練としてヘミシンク技術が使用されたという。
ヘミシンク技術はこの軍事訓練プログラムにおいて、肯定的な結果を示したそうだ。
筆者のキャロラインによれば、マクドネル・リポートやこれらの事例は、米軍や政府が超常現象を大規模で実験した初めての報告書ではないという。
他えば1972年、政府は、パイオニア10号が木星の最初の観測データや写真を送ってくる数ヶ月前に、超能力による宇宙探査を試みた。 どの政府機関がこの探査を指揮したのかはわからないが、文書は最終的にNSAによって機密解除された。
※CIAのファイルサーバーの問題で見られない場合は、下記からダウンロード。
陸軍とモンロー研究所との協力関係がいつ終わったのかは明らかになってない。
だが、キャロラインの記事やネット上に存在する文書を総合すると、マクドネル中佐は実在する人物で、米陸軍がモンロー研究所に協力を依頼して超心理学や体外離脱体験の研究をしていたという事実は間違いないようだ。
次回は、マクドネル・リポートを元に、モンロー研究所が提供する「ヘミシンク」技術と「ホログラフィック宇宙」について考察していく。