●「帰ってきたジョン・タイター(2)」(前回のタイターと同一人物なのか?)

2017/9/8

 

謎の男イメージ

今回の記事は大好きな愛読サイトでネタの引用元としてもお世話になっている「不思議.net」に先行して掲載いただきました! 不思議.netの記事はこちらから。

 

記事の中でたくさんのご意見をいただき、ちょっとだけ反映させていただきました。わかる人にはわかると思いますが、違いをお楽しみください。

なお「ジョン・タイター」の正式表記は「ジョン・ティーター」ではないか?とのご指摘がありましたが、すでにタイターがメジャーになっているのでそのままにしています。

 

 

前回の続き。

 

あの伝説のタイムトラベラー、ジョン・タイターが2017年の現代へ帰ってきたという。

 

●伝説のタイムトラベラー「ジョン・タイター」が帰還!第三次世界大戦後の“チップで管理された”世界国家樹立を予言

2017/8/26 不思議.netより

 

今回は「帰ってきたタイターが前回のタイターと同一人物か?」に注目して考察していく。前回に簡単に説明したとおり、2000年に現れたタイターが言及した「エヴェレットの多世界解釈」に従えば、再び彼がわれわれの世界線に戻ってくることは不可能なのだ。

 

あらためてジョン・タイターのタイムトラベルの軌跡を追っていく。

 

ジョン・タイターがはじめて登場したのは、wikiによれば2000年11月2日。アメリカのネット掲示板に投稿された「2036年からやってきたタイムトラベラー」という書き込みからだ。

 

タイターがやってきた目的は、1975年に発売されたIBM初のデスクトップPC「IBM5100」を入手することである。IBM5100にはマニュアルには載っていないコンピュータ言語の翻訳機能があり、これを使用することで彼の来た時代(2036年)から2年後(2038年)に起こるとされるコンピュータの誤作動問題を解決できるそうだ。

※この翻訳機能はタイターが言及するまではほとんど知られていなかったが、実際にIBM5100に搭載されている。

 

タイターはまずこのIBM5100を入手するため、1975年にタイムトラベルしたという。

それから自分の誕生した1998年にタイムトラベルし、2000年の11月にアメリカのネット掲示板にはじめて書き込みをした。その後ネット上でタイムトラベル理論や今後起こりうる重大な出来事を提示し、2001年3月の「予定の任務を完了した」という投稿を最後に消息を絶った。

 

ちなみになぜ1975年のあと1998年にタイムトラベルしたかというと、タイターがいた世界では20世紀末に問題となったコンピュータの誤作動による「2000年問題」によって深刻な災害が引き起こされ、その災害から1998年に誕生したタイター自身と両親を避難させるためだった。

※実際の2000年問題では関係各位の努力により幸いにも深刻な被害は起きなかったが、タイターはそれを自分が1975年にタイムトラベルした影響で回避されたと説明している。

 

さてタイターは「エヴェレットの多世界解釈」は正しいと発言した。

「多世界解釈」とは、量子力学において観測されるまで重ね合わせの状態だった量子が、観測した後1つの状態に収束するという「コペンハーゲン解釈」に対し、1つに収束するのではなくお互いに干渉できないまま世界が分岐して並存していくという1957年にプリンストン大学の大学院生だったヒュー・エヴェレットによって考案された理論だ。

 

タイターは「エヴェレットの多世界は時間の異なる別の世界線であり、恐らく無限に存在する」と言っている。

※世界線という言葉は本来、相対性理論において時空の中を粒子が動く軌跡のことだが、タイターは「別の世界の可能性」としてオリジナルな使い方をしている。タイターによると、タイムトラベルするたびに新しい世界線ができるというのだ。

 

しかしこの考え方に基づくと、以下のようなパラドックスを起こしてしまう。

図1 タイムトラベルするたびに世界線が分岐していくタイターモデル
図1 タイムトラベルするたびに世界線が分岐していくタイターモデル

図1は過去や未来にタイムトラベルするたびに新たに世界が分岐していくタイターモデルを描いている。

2036年まで通常の時間を進んでいたタイターは、世界線Aから1975年の世界線Bにタイムトラベルする。

1975年でIBM5100を入手し、自分の誕生した1998年にタイムトラベルした時点で世界線Cに移動する。

そして2000年にネット掲示版に登場し、書き込みをやめた2001年に元いた2036年に戻ったとする。この時点で世界線Dに分岐している。

再びわれわれのいる2017年に戻ってきたとき、タイターは世界線Eにいることになる。

 

ここでよく図を見て欲しい。われわれは2000年に現れたタイターを知っている。ということはわれわれがいるのは世界線Cということだ。つまりこの考え方では、タイターはわれわれのいる世界線へは2度と戻ってくることができないはずだ(他の世界線から他のタイターが移動してくる可能性もあるが)。

 

しかもせっかく入手したIBM5100も、タイターの元いた世界線Aには持って帰ることはできない。

 

図1にしたがえば、今回2017年の現在に現れたジョン・タイターは、前回のタイターとは「違う人物」ということになる。

 

せっかく再登場してくれたのに、彼は偽者なのだろうか?

 

でもここでもう1度考えてみよう。このサイトの主旨は、不思議な現象が起こったら「それが本当だとすればどんな理論で可能なのか?」を探ることである。

 

実はこの記事を書いている途中でふと思いついた。「パラレルワールドはあります(3)」で紹介した野村教授の「量子マルチバース理論」を使ったタイムトラベルならどうか?

量子マルチバース理論にもエヴェレットの多世界解釈が組み込まれている。

 

タイターが語った「世界線」とは量子マルチバースにおける「異なる宇宙」だったのではないか?

 

図2 量子マルチバースを使ったタイムトラベル
図2 量子マルチバースを使ったタイムトラベル

宇宙Aと宇宙Bは非常によく似ているが、宇宙Aは宇宙Bの100年前に誕生しており、それぞれの宇宙には100年間の「ずれ」がある。

何らかの方法で宇宙Aから宇宙Bに移動することができれば、100年前の世界に移動したことになる。

 

異なる宇宙間は相互作用できないが、アメリカの理論物理学者リサ・ランドール教授によれば、唯一「重力」だけが異なる宇宙間の往来を可能にする。

どうにかしてわれれわの身体を重力子に変換し時間軸の異なる宇宙に移動することができれば、タイムトラベルが実現するのだ。

 

ちなみにタイターのタイムマシンも正式名称を「C204型重力歪曲時間転移装置」という。

 

さて量子マルチバースを使ったタイムトラベルを図にしてみる。

図3 量子マルチバースの宇宙間移動
図3 量子マルチバースの宇宙間移動

タイターは2036年の宇宙Aから、それより61年遅く誕生した宇宙Bにタイムトラベル(移動)する。宇宙Bはこのとき1975年だ。そこで発売されたばかりの「IBM5100」を入手し、宇宙Bより23年早く誕生した宇宙Cに移動する。このときの宇宙は1998年だ。そこで両親に出会い2000年にネットに登場して2001年に元いた宇宙Aへ帰還したとする。このときの宇宙Aの時代は2039年になっている。残念なことに2038年問題に1年だけ間に合わなくなってしまうが、IBM5100を元いた宇宙Aに持って変えることはできる。

そして宇宙Aで16年過ごし、再びわれわれのいる宇宙Cにやってきたとすると現代の2017年にたどり着くのだ。

 

「2038年に間に合わななければ意味ないじゃないか!」と思われるかもしれない。

 

例えば2000年に書き込みをした後、以降の書き込みを他の誰かにまかせて宇宙Aに帰還していれば、無地2038年のうちに宇宙Aに帰ることができる。

 

他にも、一般相対性理論により宇宙Aの方がわれわれの住む宇宙Cよりちょっとだけ重力が強ければ、時間の流れが遅くなるので、2038年のうちに帰還できたのかもしれない。

 

しかしなぜタイターは(元の宇宙Aから38年遅く誕生した)われわれの宇宙Cにこだわっているのだろうか?

 

それは謎だ・・・ったのだが、するどいご指摘をいただいた。

 

「宇宙Cで1998年に生まれたタイターが今回のタイターでは?」

 

はい、たぶんその可能性が一番高いです。