2017/10/6
2017年度のノーベル物理学賞は、キップ・ソーン博士(カルフォリニア工科大学)、レイナー・ワイス博士(マサチューセッツ工科大学)、バリー・バリッシュ博士(カリフォルニア工科大学)の3名が重力波観測への貢献により受賞した。
特にキップ・ソーン博士は、このサイトでも「キップ・ソーン博士のタイムマシンが実現?(1)」をはじめ、ワーム・ホールを使ったタイムトラベル理論の考案者として何度も紹介しているので、とてもうれしい。
今回の考察は、ソーン博士の受賞を予言していたようなタイミングで掲載されたトカナの記事からはじめたい。
●【キター!】ついにパラレルワールドの探索が正式開始! 2018年LIGO×Virgoが“余剰次元の呼吸”検知へ!
2017/9/23 トカナより
ソーン博士らの受賞のきっかけともなった、2015年9月の重力波望遠鏡LIGOによる重力波の初観測は、光や電波やX線などの電磁波を使った観測方法に加えて、「重力」を使った新たなる観測方法を人類にもたらした。
自然界に存在する4つの力(電磁気力・強い力・弱い力・重力)のうち、なぜ「重力」だけが他に比べて極端に弱いのか?という疑問は科学者を悩ませてきた。
それを説明する1つとして、「重力」がわれわれのいる3次元空間以外の余剰次元に漏れ出しているからだという仮説がある。
ドイツのマックスプランク重力物理学研究所のグスタボ・ルセナ・ゴメス博士によれば、重力波は余剰次元のどの次元にも波及しており、しかも余剰次元はわれわれの宇宙を呼吸するように膨張・収縮させているという。この膨張と収縮を観測することができれば、余剰次元が存在する証拠となる。
余剰次元は通常の方法では観測できない高周波帯での重力波を発生させており、2018年の終盤からはじまるLIGOとイタリアの重力波望遠鏡Virgoを同時に使った観測で、この重力波を検知できる可能性がある。
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さて、さっそくトカナの記事に登場するマックスプランク研究所のゴメス博士を調べてみた。
このページによると、ゴメス博士は理論物理学者なのは間違いないが、統計データ分析や機械学習を研究していると紹介されており、肝心の「余剰次元が宇宙を膨張・収縮させている」という論文を見つけることはできなかった。
したがってトカナの記事をこれ以上深堀りすることができないので、あらためて「重力波で余剰次元やパラレルワールドが発見できるのか?」にしぼって考えてみよう。
さて、まず「余剰次元」と「パラレルワールド」は何かを整理をしたい。
「余剰次元」とはわれわれが住む3次元空間以外の空間で、超弦理論によれば、この宇宙は9次元空間+1次元時間の10次元時空であり、9次元空間のうちの6次元は小さく丸まっていると考えられている。
※超弦理論について詳しくは「10次元をイラストにしてみた」(超弦理論も徹底解説)を参照。
さてこの6次元はどのような形をしているのか?
6次元の余剰次元を図式化したものがカラビ・ヤウ多様体と呼ばれている。
次に「パラレルワールド」だがこのサイトでは異なる複数の宇宙があるという「マルチバース」と同義で扱っている。
超弦理論では宇宙の最小単位を粒子ではなく振動する「ひも」だとし、ひもには両端の開いたひも(電磁気力・強い力・弱い力)と輪ゴムのように閉じたひも(重力)の2種類がある。われわれの宇宙はブレーンという膜であり、開いたひもは両端をこのブレーンにくっつけて離れることができないが、閉じたひもならばブレーンを離れて移動できる。
つまり重力だけが自由に移動できるので、余剰次元に漏れ出しているというのだ。
下記の図を見ていただきたい。
これは「[図解]相対性理論とブラックホール 時間の遅れから特異点の謎まで」という本を参考にわたしが描いた図だ。超弦理論wikiに比べ、カラビ・ヤウ多様体が稚拙なのはご容赦いただきたい。
われわれのブレーン宇宙に小さく丸め込まれている余剰次元(カラビ・ヤウ多様体)からはスロートと呼ばれる触手が何本も伸びており、スロートとは他のブレーン宇宙ともつながっている。
だから、余剰次元をブリッジにして、われわれの宇宙から他の宇宙へと重力が漏れ出している可能性もあるし、また他の宇宙の重力がわれわれの宇宙に漏れ出している可能性もある。
他の宇宙から漏れ出している重力波を重力波望遠鏡で観測することができれば、他の宇宙がある証拠となり、マルチバース=パラレル・ワールドの存在を証明できるのだ。
重力波とは「大きな質量を持った物体が運動することで生じる、時空のゆがみの伝播」だ。
この動画は2つのブラックホールが合体する様子をシミュレーションしたものだが、注目すべきは画面左右の端の空間が波打ってゆがんでいる様子だ。このゆがみの伝播が重力波なのだ。
この重力波は非常に弱く、2015年9月に観測された空間のひずみは10-21、これは地球と太陽間の距離で水素原子1つ分ゆがませる力しかない。
これほど繊細な重力波をどうやって観測するか。
LIGOやVirgoなどの重力波望遠鏡は、正確にはレーザー干渉計といい、今回の受賞者の1人、レイナー・ワイス博士が提案したものである。
レーザーを2方向にわけてそれぞれの光を鏡に反射させ、戻ってきた光の距離を観測する。
通常時は2つの光の距離は変わらないが、重力波が空間がゆがむと、2つの光が伸び縮みするので到達時間に差が出るのだ。
レンズなどを使って遠くの物体が放つ光や波を拡大して観測する従来の望遠鏡とは、まったく違う仕組みだということがおわかりいただけるだろう。
重力波望遠鏡を使って宇宙を観測する天文学は「重力波天文学」という。
重力波天文学ははじまったばかりだが、この発展によっていずれ他の宇宙から漏れ出した重力波が観測されることを期待したい。
さて最後にこのサイトらしくオカルトチックな話を。
以前紹介した宇宙人アクァッホはこんなことを言っている。
●地球とか人類の謎を異星人から教わった話『人類誕生の鍵を握るアクァッホとは…』
2014/9/12 不思議.netより
アクァッホの星を観測する方法をたずねたら「レンズとかそういうもので拡大して見る限りは見つけられないだろう。昔の地球人はそれとは別の方法で天体を観測していたのに、どうしてその方法を使わないんだ?」