●「タイムパラドックスを回避するには?(1)」(タイムトラベル・パラドックス)

2017/7/14

 

タイムパラドックスイメージ

タイムトラベルにつきものの不可解な矛盾といえば、「タイムパラドックス」だ。

このサイトでも「タイムトラベルの基本」をはじめとして、折に触れ紹介してきたが、本格的に考察したことはなかった。

 

そこで「タイムパラドックスとは何か?」と「パラドックスを回避するにはどんな仮説や方法があるのか?」を考えてみたい。

 

まずタイムパラドックスが問題になるのは、過去への時間移動を考えるときだ。

過去へのタイムトラベルで生じる代表的なパラドックスについて、大好きなSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を例に2つ紹介すると、

 

 

(1)「親殺しのパラドックス」

マーティが過去にタイムトラベルして、自分が生まれる前にパパを殺す。

 ↓

マーティも生まれないことになってしまうが、それではパパを殺すことができない。

だからパパは生き残り、マーティは生まれる。

 ↓

マーティは成長すると過去にタイムトラベルして自分が生まれる前にパパを殺す。

これが無限ループになる。      

 

 

(2)「情報起源のパラドックス」

ドクが自宅の倉庫に眠っていた古い書物からタイムマシンの設計図を発見する。

 ↓

ドクはその設計図をもとにタイムマシンを開発し、過去にタイムトラベルして、過去の自分にタイムマシンの設計図を渡す。

 ↓

過去のドクはその設計図を元にタイムマシンを発明し、設計図を自宅の倉庫にしまう。

 ↓

タイムマシンの設計図を描いたのは誰か?

 

 

これらのパラドックスを回避する仮設として、次の4つを紹介する。

 

 

(a)「時間順序保護仮説」により、そもそも過去へのタイムトラベルが不可能

「時間順序保護仮説」とはスティーヴン・ホーキング博士が1990年に発表した仮説。

もともと過去へのタイムトラベルは閉じた時間曲線(CTC:closed timelike curve)という一般相対性理論の解を利用するが、量子論でCTCが存在する時空を考えると物質のエネルギーが無限大になり計算不可能となる。

つまり時間の順序は保護されており、因果律を破るような過去へのタイムトラベルはできない。

過去へのタイムトラベルが不可能
過去へのタイムトラベルが不可能

 

 

(b)過去へ戻ることができたとしても「事後選択説」により、パラドックスを引き起こすような行為はできない

「事後選択説」はマサチューセッツ工科大学のセス・ロイド博士が2010年に発表した仮説で、CTCは量子論に矛盾しないように選択されたものしか生じないというモデル。

ロイド博士たちの実験によると、矛盾をはらんだ状態の発生確率ほどゼロに近くなるという。

パラドックスを起こさない世界しか存在しない
パラドックスを起こさない世界しか存在しない

 

 

(C)「多世界解釈」により、戻った過去の世界はパラレルワールドとなり、パラドックスは回避される

ヒュー・エヴェレットの「多世界解釈」を元にイギリスの物理学者デイヴィッド・ドイッチュ博士が考案したモデルで、この世界は常に分岐しており、パラレルワールド(並行して存在する宇宙)がいくつもある。

過去にタイムトラベルした世界はパラレルワールドであり、その世界で歴史を変えても自分の元いた世界には影響を与えない。

タイムトラベルした先の世界はパラレルワールド
タイムトラベルした先はパラレルワールド

 

 

(d)未来はもちろん過去も常に変化しており、因果律は守られ、パラドックスは回避される

(a)から(c)までは「タイムパラドックス」でググれば出てくる一般的な仮説だが、次のは珍しく、奇妙なものかもしれない。

このサイトの「過去を変える方法」で紹介しているアラハノフ博士の考案した「弱測定」、ブラッド・スコウ博士の「スポットライト理論」、記憶は不確かで書き換え可能であるという「虚偽記憶」、そして「ホログラフィー原理」など組み合わせると、時間には、われわれが過去・現在・未来と認識する「歴史的な時間」と過去から未来へと進む一方通行の「時間の矢」の2種類がある。

この2つの時間が直交する場所が「今」であり、「今」の因果律を守るために過去や未来は常に変化している。

しかし「時間の矢」の中にいるわれわれはこの変化に気づくことができない。

因果律を破るようなパラドックスは常に修正されており、われわれの記憶にも残らない。

過去と未来が変化し「今」の因果律を守る
過去と未来が変化し「今」の因果律を守る

例えばAでパラドックスを起こしても、因果律が守られるようにBでオレンジ色の歴史から緑色の歴史に過去と未来が修正される。

しかしその変化をわれわれが知ることはない。認識できるとすれば、「時間の矢」の外にいる観測者だけだ。

 

 

それではこの4つの仮説を使って(1)「親殺しのパラドックス」の回避方法を解説していこう。

 

(a)の「時間順序保護仮説」では過去へのタイムトラベルがそもそも不可能なのでパラドックスは起こらない。

※ちっともおもしろくない考え方だが・・・。

 

(b)の「事後選択説」では、マーティがパパを殺そうとしてもナイフが折れたり、ピストルの弾がそれたりして、パラドックスを起こす歴史は必ず回避される。

 

(C)の多世界解釈では、マーティがタイムトラベルした過去の世界はパラレルワールドであり、その世界のパパは元の世界のパパとは違う人間。

だからそのパパを殺してもマーティの存在が消えることはない(パラレルワールドのマーティはもちろん生まれなてこないが・・・)。

 

(d)の仮説では、マーティが過去に戻ってパパを殺したすぐ後に、因果律が守られマーティの存在は消えてしまう。

ただし無限ループが発生することはなく、マーティの存在しない歴史に修正される。

※もっともSF的、映画的な考え方で個人的に好き。

 

 

次に(2)「情報起源のパラドックス」の回避方法について考えてみよう。

 

(a)の「時間順序保護仮説」では過去へのタイムトラベルそのものを否定しているので、このパラドックスを解くことはできない。

 

(b)の「事後選択説」では、ドクが倉庫からタイムマシンの設計図を見つけてタイムマシンを完成させた時点で、設計図をもってタイムマシンに乗ることはできなくなる。

たとえ設計図をもって乗り込んだとしても、過去のドクに渡す前に設計図は必ず紛失する。

そして過去のドクは未来から来たタイムマシンを見て、あらためて設計図を書きおこすのだ。

 

(C)の多世界解釈では、タイムトラベル前の元の世界に、タイムトラベル後のパラレルワールドにあるはずの設計図が存在してしまうので矛盾が起こり、このパラドックスを解くことはできない。

 

(d)の仮説では、(b)とよく似ているが、ドクがタイムマシンに設計図を乗せて過去に戻った瞬間、歴史が改変され、設計図はドクの記憶からも歴史上からも文字通り消滅する。

過去のドクは未来から来たタイムマシンを見て、あらためて設計図を書きおこす。

 

 

さて今回は身体ごと時間移動するタイムトラベルのパラドックスについて考えてみた。

 

次回は意識のみが時間移動するタイムリープのパラドックスを考察したい。