2018/5/4
みなさんは「ワームホール」(wiki)をご存知だろうか?
2つの離れた「時空」、つまり離れた「場所」と「場所」、離れた「時間」と「時間」を結ぶトンネルのことである。
昨年ノーベル賞を受賞したキップ・ソーン博士は、この「ワームホール」を利用して、過去や未来にタイムトラベルすることのできる自身の理論を提案している。
※詳しくは「キップ・ソーン博士のタイムマシンが実現?(1)」を参照。
ドラえもんの「どこでもドア」をはじめ、さまざまなSF映画や漫画で「ワームホール」のアイデアが使われているが、その存在はあくまでSF的な空想上のものと考えられてきた。
ワームホールはもともとアインシュタインの一般相対性理論から導かれる数学的な可能性の一つにすぎない。
だから次の記事を見て驚いた。
●宇宙の離れた2地点をつなぐ!「磁気ワームホール」が実験室でつくられていた
2018/4/1 Nazologyより
一般的なワームホールは重力により空間を歪めてトンネルを作るものだが、バルセロナ大学の研究チームが作ったこのワームホールは磁気を使うという。
われわれが想像するようなイメージとはだいぶかけ離れている。
簡単に説明すると、磁場を通さない物質でトンネルを作って片方の入口から磁場を入れると、もう一方の出口から磁場が突然出現するという。
つまり磁場が入口から出口へテレポーテーションしたように見えるシステムだ。
残念ながらこのシステムを直接タイムマシンに利用することはできないが、2週間後にNazologyに掲載された別の記事を見て再び驚いた。
2018/4/17 Nazologyより
一言でいえば、「ブラックホール」と「ワームホール」を見分ける方法が発見されたそうだ。
この論文「Shadows of rotating wormholes」(回転するワームホールの影)を発表したのはインドの物理学者ラジブル・シャイク氏だ。
「ブラックホール」は光でさえも逃げ出すことのできない宇宙に空いた穴だが、アインシュタインの一般相対性理論によれば、その正体は時空の歪みである。
トランポリンの上に重い鉄の球を置くと球を中心に沈むが、その球が極端に重過ぎると底が抜ける。これを宇宙規模で考えてみよう。
例えば太陽の30倍以上もある星が最後を迎えて爆発すると、自らの重みでどんどん縮んでいき強大な質量をもった小さな天体となる。その星は強大な質量でまわりの時空を歪め、ついには時空に穴を開けてブラックホールが誕生するのだ。
その時空に開いた穴を入口として、その先の出口とトンネルでつながっているのが「ワームホール」だ。
ブラックホールにはいろいろなタイプがあり、自ら回転するブラックホールを考案者の名前を付けてカー・ブラックホールと呼ぶ。
※カー・ブラックホールについては「ジョン・タイターのタイムマシン解説(1)」を参照
シャイク氏によれば、ワームホールになれるブラックホールの【条件1】として「自ら回転」していなければならない。
さらに【条件2】として、回転速度が早くなったとき「ブラックホールの影が円形から楕円へ歪む」という。
ここで「ブラックホールの影とは何ぞや?」と思った方は次の写真をご覧いただきたい。
ブラックホールが宇宙空間に漂う塵や光さえも吸い込み、中央にぽっかり暗黒の影が開いている。
この影の形を望遠鏡で観察することができれば、「回転して」かつ「円形の影が歪んでいる」ブラックホールはワームホールとして見分けることができるというのだ。
では次の段階を考えてみよう。
はるか彼方の宇宙にワームホールと思われる天体を発見した。
ただしそこは地球から何光年(※1光年は光が宇宙空間を1年間に進む距離)も離れている。
タイムトラベルに挑戦しようとロケットで出発しても、そんなに離れていれば生きているうちにたどり着くことはできないだろう。
地球の近くにワームホールが存在する可能性はないのだろうか?
そんなことを考えながらWEBを検索していたとき、次のような記事を見つけた。
●NASAが公式発表した異次元ワームホール「Xポイント」研究に新展!? 宇宙船4機が既にワープか!
2017/2/21 トカナより
記事によると、NASAが地球の大気圏の近くで「インターステラー(字幕版)」に出てきたようなワームホールの入口「Xポイント」を発見し、すでに4機の宇宙船を送り込んだという!
ワクワクが止まらないが、落ち着いてソース元のNASAの記事を読んでみた。
Hidden Portals in Earth's Magnetic Field(地球の磁場の中に隠されたポータル)
2012/7/2 2012NASAより
NASAが支援しているアイオワ大学の研究者たちは、地球の近くにあって隠れている「磁気ポータル」を探査機で捜索する方法を開発した。
この通り道は、地球の磁場と太陽の磁場を結びつけ、「Xポイント」または電子拡散領域と呼ばれている。
NASAの探査機の観測によって、磁気ポータルが1日に数十回も開いたり閉じたりすることがわかった。
ほとんどのポータルは地球の磁場が太陽風と出会う地点から数キロメートル離れたところに位置しており、小さく短命だ。
たくさんのエネルギー粒子がポータルを通って地球に流れ込み、地球の大気を加熱したり、磁気嵐を引き起こしたり、極地にオーロラを出現させる。
つまりこのポータルとは、地球と太陽からの磁力線が交差するポイントで、地球の大気を温めたり磁気嵐やオーロラの原因となる磁場が流れ込む通路にすぎない。
だからとてもタイムトラベルに利用できるワームホールなどではない。
よし、地球の近くでワームホールを探すのはやめた。
次はもっと大胆に「ワームホールを人類の手で作り出すことはできないのか?」を考えてみたい。
そんな無謀なことを書いても大丈夫か?
実はWEBを検索しているときにおもしろそうな論文を見つけたのだ。
タイトルは「Can a circulating light beam produce a time machine?」。
次回はこの論文をもとに「ワームホールを作る方法」を考察していこう。