●時間とは-ホログラフィー原理(2)

2016/6/2

前回からの続き。超弦理論は、超ひも理論とも呼ばれ、物質の最小単位である粒子は、実は「点」ではなく、1本の振動する「ひも」だという理論。このひもは振動する周波数の違いで世の中に存在する光子などのさまざまな素粒子に対応し、さらに閉じたひもと、開いたひもの2種類がある。閉じたひも(輪ゴムをイメージしてほしい)は次元間を自由に移動できるが、開いたひも(アーチをイメージしてほしい)はブレーンという膜に両端を常につけられていて、ブレーンから離れることはできない(ブレーン上/平面を移動することはできる)。そして我々を構成する原子や光などの粒子はすべてこの開いたひもであり、ブレーンから離れることはできない。唯一自由に移動できる閉じた粒子が「重力」に対応する。映画「インターステラー」 を見た人はご存じだろう。

もともと超ひも理論は宇宙の様な大きいスケールを説明する一般相対性理論と、粒子のような極小のスケールを説明する量子論の間にある矛盾(重力に関する問題)を解決するために考案された理論で、チョー難しい。だって例えばこの宇宙は3次元(時間を加えると4次元)ではなく、9次元(時間を加えると10次元)だとか、3次元以外の6次元は余剰次元として小さく巻き込まれている(我々は3次元しか認識できないので観察することができない)とか、本当にわけがわからない。わけがわからないので計算も難しい。

だがホログラフィー原理を使えば難解な10次元の超弦理論(重力を含む)を4次元の場の量子論(重力を含まない)で説明できる(場の量子論は,超弦理論の現象が時空間の果てに映し出された影のようなものらしい)。その代表例がマルダセナという教授が考案したAdS/CFT対応。ちなみにAdS(反ド・ジッター空間)という平坦でない特殊な宇宙(われわれの住む宇宙は観測で平坦とされている)での説明なんだけど、最近の論文ではわれわれの住む平坦な宇宙にもホログラフィー原理が適用できると発表されている。

ここで大栗教授らの研究につながる。2つの量子がもつれあっている場合、数学的には重力を含む難しい超弦理論を、重力を含まない比較的シンプルな場の量子論として計算できる。言い換えればこれは、我々の宇宙で目撃する現象は、この宇宙を囲むペラペラの境界表面(宇宙の地平面という)に映し出されていることになる。つまり我々の時空は、量子もつれによるはるか彼方のスクリーン(ブレーンという平面上)に映し出された鏡像なのだ。しかも興味深いことにこの我々の宇宙が主なのか、境界表面の情報が主なのか、まだ明確になっていない。境界表面の情報が設計図のように働き、量子もつれによって我々の宇宙を形成している可能性もあるのだ。

ホログラフィー原理image

 

さて、ここでやっと「時間の矢」が登場する。ブラックホールの事象の地表面は時間経過ごとに面積が大きくなっていく。これはわれわれの宇宙を囲む境界表面にも対応することが可能だ。つまり宇宙の膨張は境界表面の面積の拡張によってエントロピーが増大し、これが「時間の矢」として認識されるのではないか?

 

さて、ここで最初に立ち返り、「2つの時間を組み合わせるとどうなるのか?」を次回考えていく。