●「過去を見るタイムマシンの作り方(2)(6次元理論の応用 )」

2017/2/23

 

クロノバイザーイメージ2

前回、過去を見ることのできるタイムマシン「クロノバイザー」を紹介したが、今回はいよいよその作り方について考察していく。

 

 

「過去を見るタイムマシンの作り方」(仮説)は、ジェニー・ランドルズの著作「タイムマシン開発競争に挑んだ物理学者たち」で紹介されていた原理をヒントにしている。

 

まず、次の図1をご覧いただきたい。 

図1
図1

 

これは空を見上げたときに見える天体地球との、時間空間の関係を表わした時空図だ。

空間は実際には3次元だが1次元に省略して縦軸xとし、時間横軸tで表している。

 

光の速さ毎秒約30万km(毎秒29万9792.458km)で、図の中で一番近い月までの距離38万4400km。

光の速度で割ると1.28秒、つまりわれわれは、1.28秒前の月を見ている

 

太陽までの距離1億4960万kmで、光の速度で割ると8分19秒、われわれは8分19秒前の太陽の光を浴びている

 

さらに図の中で一番遠い1光年先にある天体との距離は9兆4600億kmにもなり、この天体の光が地球に届くまで、ちょうど1年かかる

 

何が言いたいかというと、われわれが見ているの空の星たちは、すべて過去の姿なのだ。

 

 

次に図2をご覧いただきたい。

図2
図2

 

図2図1の縦軸と横軸を入れ替えたものである。この図では縦軸が時間t横軸が空間xに入れ替わっている。

 

左から現在の月(1.28秒前)、1ヶ月前の月(1ヶ月前)、1年前の月(1年前)が並んでおり、図1では距離を表示していた数字のところが赤字で???になっている。

 

????は月の光が地球に到達するまでの架空の時間を表わしている。

地球から月までの距離は変わらないのだから、月の光が地球に到着するまでの時間を何らかの方法で伸ばしてやれば、過去の月を見ることができるはずだ。

現時点では伸ばす方法さえわからないので、????としている。

 

それでは「時間を伸ばす(遅らせる)方法」を考えてみよう。

 

 

例えば重力レンズはどうだろうか?

 

重力レンズは、一般相対性理論から導かれる現象で、光が時空を進む際、途中に大きな重力源(例えば大きな重力の天体)があると時空が歪められ、光は歪められた時空に沿って進むために曲がってしまう。

対象物と観測者の間にこのような大きな重力源があると、曲がった光が複数の経路を通って観測者に到達し、同一の対象物が複数の像となって見える。この現象を光学レンズによる屈折にちなんで重力レンズという。

 

月と地球の間に大きな重力の天体、例えばブラックホールのような超重力を発生する天体を置けば、一般相対性理論から空間が歪み、地球までの到達距離が少し長くなる。

従って月の光が地球に届くまでの時間を少しだけ伸ばすことができる。

 

だがそこまでして伸ばせる時間はほんのちょっとだし、そもそもそんな巨大なブラックホールを置けば、月もろとも地球はあっという間に飲み込まれて消滅してしまう。

 

ここで行き詰まっていたのだが、われわれの時空を3次元空間+3次元時間の6次元ととらえる元イギリスLeeds大学教授のコール博士の6次元理論を考察してから、思いついたのが図3だ。

 

つまり光が通る時間軌道を余剰次元方向に反らし、到達時間を伸ばしてしまう方法である。

図3
図3

縦軸横軸3次元時間のうちの2方向の時間(T1とT2)を表わしている(3つ目の時間T3は省略)。

 

コール博士によると、普段われわれが時間を1次元だと思い込み、3つの時間次元に気付くことのできない理由は、日常的な物体の時間方向を変えるためには膨大なエネルギーを必要とするからだ。

 

例えば質量1kgの物体の時間方向を、1度だけ変えたいとするならば、コール博士の計算では少なくとも1.57×1015ジュール(広島型原子爆弾の29個分に相当する)のエネルギーを供給しなければならない。

 

こんな巨大なエネルギーを日常で利用することはできず、そんなエネルギーに耐えられる物体も存在しないため、われわれには時間が1次元だとしか認識できない。

 

ただし、電子の時間方向を1度だけ変えるために要求される最小限のエネルギーは、1.43×10-15ジュールですむそうだ。

これはeV(電子ボルト)に直すと約約9KeVになり、1keV のエネルギーはだいたい真空放電をするときの電子やイオンのエネルギーやX 線のエネルギー相当なので、その9倍程度でよい。

 

図3を説明すると、日常的な時間の場合、光はT1方向へまっすぐに進み、1.28秒かけて地球へ到達する。

 

光は電磁場の一種だから、角度θaに時間方向を反らし到達する時間の長さを伸ばすことができれば、1ヶ月前の月を観測できる。

 

また角度θbに時間方向を変えることができれば、光の到達時間を1年間に伸ばして1年前の月を観測することができる。

 

原理は単純だが、これを実現するためにはコール博士の6次元理論が正しいことを証明しなければならない。

例え証明できたとしても、光を余剰次元時間方向に反らしてクロノバイザーのような装置を完成させるためには、超えるべき技術の壁がいくつもある。

 

しかしもしこの仮説が正しければ、キリストの生きていた2000年前の時代とはいかなくても、監視カメラのように設置して、ドラえもんが隠していたどら焼をのび太がこっそり食べてしまった証拠を撮影するための、1時間前ぐらいの写真は撮れるタイムマシンが開発できるかもしれない。

 

・・・ん? それってただの監視カメラでいいんじゃ・・・。

 

次回はもう少し別の角度から、「過去を見るタイムマシン」を考察してみる。