●「今、マルチバース理論が熱い!」(マルチバースによるタイムトラベル)

2017/11/17

 

マルチバースイメージ

ニュートン 2017年 12 月号」ムー 2017年 12 月号」。

 

それぞれ「科学界」と「オカルト界」を代表する人気雑誌だ。

 

普段は真逆の立場で決して交わることのない雑誌が、今月号は呼吸を合わせたように同じ特集を組んでいる。

 

その特集とは「マルチバース理論」(マルチバース宇宙論)

 

このサイトでも「パラレルワールドはあります!(2)」「パラレルワールドはあります!(3)」で詳しく紹介しているが、「マルチバース理論」とは、一言で言えば、宇宙はわれわれの宇宙だけではなく、物理法則やさまざまな条件の異なる宇宙がたくさんあるという仮説。

 

それぞれの雑誌の特集をごく簡単に紹介すると、

 

●「ニュートン」はオーソドックスにマルチバース理論が生まれるきっかけとなったインフレーション理論から紹介。

われわれの宇宙ではインフレーションが終了しているが、今もどこかの宇宙ではインフレーションが続いており、あらたな泡宇宙が誕生していること。インフレーション理論はBモードという偏光の観測によって実証されること。マルチバース理論も、この宇宙で負の曲率が観測されたり、他の宇宙と衝突した痕跡(宇宙マイクロ波背景放射の偏り)によって証明されると紹介している。

 

●「ムー」は2017年のノーベル物理学賞で話題になった重力波からはじまり、ビッグバン理論からインフレーション理論、そしてマルチバース理論という最新の宇宙物理学を丁寧に説明。3次元以外の次元(余剰次元)を導いた超弦理論やM理論、重力波望遠鏡によるマルチバースや余剰次元の観測の可能性を示し、 最後には「ムー」らしくマルチバース理論によって解明が期待されるオカルト現象を紹介している。

 

例えば、

 

●ポルターガイスト現象・・・他の宇宙からの重力による干渉

 

●人体発火現象・・・熱エネルギーの局所的な相転移

 

●ドッペルゲンガー・・・他の宇宙の自分を垣間見てしまった

 

●前世の記憶・・・他の宇宙の異なる人生を歩む自分の記憶が干渉した

 

●あの世・・・物質が存在せず、精神エネルギーだけが進化した宇宙

 

「あの世」とマルチバースを結び付けるとは「さすがムー!」と関心したが、納得できないことが1つ。

 

マルチバース理論によって可能性が広がる重要な不思議現象が提示されてないではないか!

 

それがタイムトラベルだ。

 

 

●マルチバース理論によるタイムトラベル

 

簡単に説明しよう。

 

マルチバースでのタイムトラベルはわれわれと非常によく似た宇宙の探索からはじまる。

(超弦理論の方程式を解くと10500種類の宇宙が出てくる。10500個ではなく10500種類ということは、ありとあらゆる宇宙が存在することになる)

 

1)われわれのすむ宇宙ととても似通った宇宙を発見する(その宇宙には地球があり、もう1人のあなたが住んでいる)。

 

2)発見した宇宙は、誕生した時期がわれわれの宇宙とずれているか、重力の強さがわずかに異なることにより、歴史の進行度が遅く(または早く)なっている。

 

3)その宇宙へ何らかの方法で移動するゲートを作る。

 

4)われわれの宇宙からゲートをくぐって歴史の進行度が異なる宇宙に移動すればタイムトラベルできる。

 

次の図をご覧いただきたい。 

マルチバースとタイムトラベル
マルチバースとタイムトラベル

ゆらぎの海から相転移により宇宙が生まれる。その宇宙からインフレーションによりさらに子宇宙、孫宇宙が生まれていく。

コマみたいな形は順調に成長している宇宙だが、中には紡錘形のように真空のエネルギー密度が大きすぎて(または小さすぎて)つぶれてしまう宇宙もある。

 

Aの宇宙は現在2037年で、今2017年であるBの宇宙に比べて歴史の進行度が早い宇宙である。

 

Cの宇宙は現在1997年で、歴史の進行度がBの宇宙に比べて遅い宇宙である。

 

Bの宇宙からAの宇宙へ黄色い矢印のように移動すれば未来へタイムトラベル、Bの宇宙からCの宇宙へ赤い矢印のように移動すれば未来へタイムトラベルすることができる。

 

以前不思議.netに掲載いただいた「帰ってきたジョン・タイター(2)」でこのタイムトラベルを紹介したとき、

 

「絶対時間でとらえているのではないか?」、「相対性理論と矛盾するのはないか?」との指摘をいただいた。

 

マルチバースでのタイムトラベルは、あくまで相対的に歴史進行度の違う宇宙へ移動するものであり、宇宙に絶対的な時間が存在するという意味ではない。

上の図の宇宙Aは1年たてば2038年になるが、そのとき宇宙Bは2018年になっている。

※宇宙Aにある地球の方が宇宙Bにある地球よりも少しだけ重力が強ければ、一般相対性理論により宇宙Aの地球の方が宇宙Bの地球より少しだけ時間の進み具合が遅くなるかもしれない。

 

また、宇宙Aから宇宙Bへ移動すると、移動した人のエネルギー分だけそれぞれの宇宙に差異が生じてしまい、これは熱力学第一法則、つまり「エネルギー保存則に反するのではないか?」と思われるかもしれない。

 

次の図を見て欲しい。

オムニバース
オムニバース

カリフォルニア大学の野村泰紀教授によれば、マルチバース全体の量子状態は静的で変わらないという。

われわれの宇宙(ユニバース)の集合をマルチバース、そして理論上考えうるすべてのマルチバースが含まれた全体をオムニバース(wiki)とすれば、オムニバース全体のエネルギー量は変わらないのでエネルギー保存則とも矛盾しない。

 

マルチバースでのタイムトラベルは「ただのパラレルワールド間の移動ではないか?」という意見もあった。

 

これはまったくその通りである。ただし異なる宇宙間の移動であるからこそ、宇宙A(2017)にいるあなたが宇宙B(2037)にいるあなたと接触しても昔のSF映画で描かれているような爆発や銀河の消滅を起こすこともないし、宇宙C(1997)にいる若かりしころのあなたを殺しても、宇宙Aのあなたが消えることはない。

 

未来の宇宙Aや過去の宇宙Cを体験して宇宙Bに戻ってこれるので(旅行した間の時間は経過しているが)文字通り時間旅行ができるのだ。

 

欠点と言えば宇宙C(1997)で過去を変える行為をしても宇宙B(2017)のあなたには何の影響もないことだ。

例えば宇宙Bで過去のロトくじの当選番号を調べて宇宙Cのあなたに当選番号を教えたとする。当選金を入手できるのは宇宙Cのあなたであって宇宙Bのあなたではない。異なる宇宙のあなたは姿形は同じでも違う人間なのだ。

 

マルチバースをテーマにした漫画や小説で「この世界にあなたは無数にいるけれど『あなた』は1人だけ」というのはこういう意味だ。

 

さてここまで話は順調に進んだが、いざマルチバースによるタイムトラベルの実践となると一気にハードルが高くなる。

 

1)と2)の歴史進行度だけが違ってわれわれとほぼ同じ地球が存在する宇宙の発見はどうすればいいか? 重力波望遠鏡も含めたさまざまな観測手段の進歩が必要だろう。

 

3)の移動する手段も、すぐに思いつくのはキップ・ソーン博士のワームホールだが、「新しいワームホールが考案された!」でもご紹介した通り、最新のワームホール理論をもってしても瞬間移動はできないので実現はきびしい。

 

もしかしたら「もっともお手軽な過去を変える方法(2)」でご紹介したミチオ・カク博士の「デジャヴはパラレルワールドからの情報」をベースにした明晰夢を使ったタイムリープが最後の希望なのかもしれない。

 

明晰夢を見る方法をもう1度探してみるか・・・。