●「タイムリープの仕組みを解明(1)」(量子論的スポットライト理論)

2019/11/2

 

量子論的スポットライトイメージ

 

精神だけが身体を離れて時間移動する「タイムリープ」

 

このサイトでもさまざまな情報を紹介してきたが、

 

●「現時点で一番可能性の高いタイムリープする方法」(2019年度版)

 

「魂を身体から切り離す」とか「精神だけで次元を超える」など、相対性理論などの物理学を使って説明するタイムトラベルに比べると、どうしてもオカルトやスピリチュアルなどの「疑似科学」に頼らざるを得なかった。

 

 

●「タイムリープで過去に戻る方法(1)」でも

魂を前提としたクオンタム・アクセス
魂を前提としたクオンタム・アクセス

われわれの意識を表層の「自我」、中間層の「無意識」、深層の「魂」という3つに分け、「魂」が、量子もつれによって、ホログラフィー宇宙の事象の地平面と「クォンタム・アクセス」している仮設を紹介している。

 

 

しかし「魂」を前提としたままではオカルトスピリチュアルから脱却できない。

 

私が目指している「タイムリープ」その仕組みが論理的に説明可能で、訓練したり何らかの装置を使うことで誰でも体験できるものだ。

 

オカルトやスピリチュアルを否定するつもりはないが(個人的には大好きだ)、このままでは再現性にとぼしく、実験で仮説を検証することもできない。

 

だから「魂」を使わず、「意識」は脳が作り出しているという最新の脳科学から改めてタイムリープの仕組みを考えてみることにした。

 

つまり脳機能の出力結果である「意識」と「無意識」だけでタイムリープの仕組みを考えるのだ。

 

 

今回の考察のきっかけになったのは、「脳が時間をどのように処理しているか」を研究している心理物理学の専門家が書いた「脳と時間: 神経科学と物理学で解き明かす〈時間〉の謎」

という本だ。

 

「あなたの脳はタイムマシン」というサブタイトルに魅かれ、一気に読んでしまった。

 

 

著者のディーン・ブオノマーノ博士は、米カルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の神経生物学・心理学部の教授だ。

 

「あなたの脳はタイムマシン」の真意として、ブオノマーノ博士は、景色を見るために「目」が、音を聞くために「耳」が、においをかぐために「鼻」が感覚器官として機能するように、脳は「時間」を知覚し、心的時間旅行するためのタイムマシンとしての機能を担っているという。

 

まずブオノマーノ博士の理論にしたがって、脳が時間を知覚する能力を得た歴史から解説する。

 

 

【どのようにして脳が時間を知覚するようになったか?】

われわれ人類が古代からどのように時間について知覚してきたかというと、狩りの時代にはまだ「時間」は重要ではなかった。

やがて穀物を育て食糧をストックできるようになってはじめて、未来を予測することを覚えたという。

 

それでは「時間」を理解しているのは人間だけか? 他の動物は「時間」を理解していないのか?

 

例えばライオンが「次に獲物がどう行動するか?」を予測したり、クマが餌のなくなる冬に備えて冬ごもりをするなど、一見時間を理解しているように見える動物もいるが、その行動原理は本能的なものだ。

 

しかし中にはイギリスの心理学者ニコラ・クレイトンが調査した「アメリカカケス」の実験のように、未来を指向するように見える動物もいる。

 

アメリカカケス(wiki)は北米に生息するカラス科の青い鳥だが、エサを分散した場所に蓄えておき、後に回収できる能力をもっている。

アメリカカケスは雑食性で落花生より毛虫を好むが、4時間後にエサを回収する場合は毛虫を選ぶ割合が圧倒的に高く、5日後でないと回収できない場合は、腐敗した毛虫よりもほぼ100%落花生の方を選ぶ。

さらにエサを隠すとき、他のアメリカカケスに見られたことを知ると、後でこっそりエサを回収して再び隠す。

 

新鮮なエサが時間が経過してだめになったのがわかったり、ライバルに横取りされるのを防ぐために再びエサを隠したりできるアメリカカケスは、少なくともある程度の未来を思い描く心的時間旅行の能力をもっているといえる。

 

しかしアメリカカケスは人間のように来年に備えて稲を植えたり、健康のために運動したり、やがて訪れる死を恐れたりはしない。

 

簡単な手話を学習できるチンパンジーでも、10年前に何が起きたか、10年後に何が起きるかを想像することはできない。

 

2011年の東日本大震災の後に有名になった、「ここより下に家を建てるな」という警告の石碑が数百年も昔に刻まれていたというエピソードがある。

 

人類は自分の命ではなく、はるか先の子孫の命を守るために、未来へ心的時間旅行することができるのだ。

 

 

しかしそんな他の動物にはない優れた「時間知覚能力」をもつ人間でも、その精度に関しては精神状態や周囲の状況によって大きく左右される。

 

例えばクラシックのコンサートを楽しんでいるとき、後ろの席であってもシンバルをたたいた「光景」と鳴った「音」は同時に知覚される。

 

しかし実際にはシンバルをたたいた「光景」と「音」は、ほんの少し「音」の方が遅れて届いているはずだ。

 

これは「無意識」の脳が、物事をなるべく同時にあなたの「意識」に届けようとがんばって調整するからだ。

脳が視覚情報と聴覚情報を一体化させる時間範囲のことを「統合の時間窓」と呼ぶ。

 

「統合の時間窓」の範囲内では、例えば映画の音声トラックと画像トラックに0.1秒のずれがあってもほぼ気がつかない。

 

さらにおもしろいのは視覚信号より聴覚信号が0.05秒遅れても気づかないが、逆に聴覚信号が視覚信号より0.05秒速くなると「何か変だぞ」と気づくことだ。

つまり脳は(聴覚信号)が(視覚信号)よりずっと遅いことを本能的に理解している。

 

だがさらに、聴覚刺激をフラッシュなどの視覚刺激よりも先に与える実験を数百回繰り返すと、その後被験者は聴覚刺激を視覚刺激より先に知覚しても同時に感じるようになる。

つまり「統合の時間窓」の範囲は絶対ではなく、意図的にずらしたり広げたりできるコントロール可能なものなのだ。

 

つまりわれわれの脳は優れた時間知覚能力をもっているものの、それは水晶時計のように正確なものではなく、脳の中の「無意識」が一生懸命調整している錯覚なのだ。

 

 

【脳が作り出す「意識」と「無意識」】

 

それでは次に脳がどのようにして「意識」「無意識」を作り出すのか、われわれが自分だと感じる主観的な「意識」「無意識」との関係を考える。

 

このドレスの画像をご存知だろうか?

 

見る人によって色の変わるドレス
見る人によって色の変わるドレス

 

数年前インターネットで話題になったが、私にはこのドレスの縞模様は「白と金」に見える。

ところが「青と黒」に見えるという人もいて、その割合は半々ぐらいだ。

 

その理由として、人は物体を見るときその物体が放つ光の波長をそのまま意識に伝えるのではなく、脳が都合いいように変換して意識に伝えるためだ。

 

例えばこのドレスが「白と金」に見える人は昼間太陽光を浴びることの多い人、「青と黒」に見える人は夜人工光を浴びることの多い人だと言われる。

 

つまり普段われわれが過ごしている環境によって、脳が勝手に色のバランスを補正してしまうのだ。

 

このドレスの画像は、脳が外界を認識して意識に伝える構造は、高度に編集された仮想現実なのだということを示している。

 

 

さらにブオノマーノ博士はおもしろい実験を紹介している。

 

4つのスクリーンのどれか1つにごくわずかな時間刺激(映像)が映し出され、どのスクリーンに表示されたかを答える実験で、0.25秒までは被験者が刺激に気づこうが気づくまいが脳の活動に違いはなかった。

 

ところが0.3秒を超えたあたりから気づきが脳全体に広がり、脳の活動の明らかな増加が認められた。

 

スクリーン刺激実験
スクリーン刺激実験

 

フランスの神経科学者スタニスラス・ドゥアンヌによれば、「われわれは外界からのシグナルを意識する際、少なくとも0.3秒は遅れた状態で意識している」という。

 

「あなた」という意識は、実際には0.3秒遅れの世界を見ているのだ。

 

 

もう1つの興味深い実験。

 

UCLAの神経外科医イツァーク・フリードがてんかん患者に協力してもらい行った実験で、前頭前野に電極を刺入し、いつでも好きな時にボタンを押してもらった。

 

患者がボタンを押す0.9秒も前に、多くのニューロンが活動レベルを変化させた

そして患者がボタンを押そうとするタイミングを80%以上の確率で予測できた。

 

つまり被験者がボタンを押そうと自ら意識する前に、実験者はそのタイミングを知ることができたのだ。

 

ボタン押し実験
ボタン押し実験

 

ボタンを押すためには指の筋肉の収縮が必要で、そのためには筋肉を収縮するための活動電位が必要で、そのためには脳の運動野のニューロンが発火しなければならない。

 

しかしニューロンの発火はノイズが多くいつ発火するかはランダムで、脳内の特定の回路の「無意識」によって引き起こされる。

 

ボタンを押そうとする行為は「無意識」下でランダムに決定され、あなたの「意識」とは無関係のようなのだ。

 

 

ブオノマーノ博士はこの実験結果からただちに「神経の活動パターンから人の行動を予測可能だとか、意識は人の行う決定に関与していないなどとは判断できない」と述べている。

 

もちろん指をいつ動かすかという単純な動作と、われわれが生活の中で行っている複雑な意思決定を単純に比べることはできない。

 

だが、あなたの自由意志が「意識」上に芽生える0.9秒前にはすでに、脳の中で「無意識」的なニューロンの計算が行われている。

われわれの「意識」は「無意識」に大きくコントロールされており、あなたの「自由意志」がランダムなニューロンの発火によって決まるのならば、あなたの主観は錯覚なのだ。

 

 

いままで考察したことをまとめると、われわれの脳はすぐれた「時間知覚能力」をもっているが、それは脳の「無意識」下によって調整されるあいまいなもの

さらにあなたの主観的な「意識」は「無意識」にコントロールされた錯覚・・・。

 

こんな考察で本来の目的であるタイムリープを「意識」と「無意識」だけで解明することができるのか?

 

次に神経学的な立場からと物理学的な立場からの、「時間」についての2種類の考え方を紹介する。

 

 

【現在主義と永遠主義(ブロック宇宙論)】

 

ブオノマーノ博士のような脳神経学者は、時間は「今」しか存在しないという「現在主義」の立場をとる。

 

物理学者や哲学者は、「過去・現在・未来」は同時に存在するという「永遠主義」を主張する。

 

●「時間と宇宙と運命の法則(1)」で紹介してるように、私も「永遠主義」だ。

 

この「永遠主義」を説明する理論として、宇宙がはじまったときにすでに過去・現在・未来のすべての時間が存在したという「ブロック宇宙論」がある。

 

ブロック宇宙論
ブロック宇宙論

 

ブロック宇宙論はもともと、宇宙誕生の瞬間からわれわれの運命はすでにすべて決まっているという決定論的な考え方だ。

 

ところで普段われわれは「時間が流れている」というありありとした感覚を感じているが、ブオノマーノ博士のような脳神経学者にしても、物理学者や哲学者にしても、その感覚は「錯覚」というのが共通の意見だ。

 

例えば物理学では時間は空間の4つ目の次元であり、「時間の流れ」はわれわれの心の中にのみ存在し、外界の特徴ではないと考える。

 

このサイトでも

 

●「時間とは-スポットライト理論」で紹介しているが、

 

スポットライト理論
スポットライト理論

 

「時間が流れる」という感覚は幻で、過去から現在へ、現在から未来にスポットライトが移動してくような様「時間が流れている」ように見えるという理論だ。

宇宙誕生から終わりまでのすべての時間は同時に存在するが、スポットライトが過去から現在に移動したから過去に戻れないのであって、単に「過去」という物に触れる事が出来なくなってしまっただけなのだ。

 

 

しかしブオノマーノ博士が「時間の流れの主観的な感じは錯覚」というとき、そのニュアンスは異なる。

それは心の中にある概念だが、外界に実在する今だ知られていない何らかの物理現象を表現しているという意味だ。

つまり「時間の流れを主観が感じる現象」は実在しているが、われわれがまだその仕組みを正しく理解していないからというのだ。

 

ブオノマーノ博士によれば、ブロック宇宙論では「今」瞬間-瞬間としてとらえるが、「瞬間」では意識は生まれない。 

 

「時間の流れ」を使わずに生命を説明しようとすれば、命は継続的な代謝の変化だと定義される。しかし継続的に変化するためには、時間に継続的な厚みがなければならない。

 

例えば物質も縦・横・奥行という3次元の空間という広がりがあるからこそ、ただの「点」ではなく「物質」として拡張される。意識も同様に生み出されるためには時間的厚みが必要で、継続的な時間経過の中でのみ意識が生み出されるという。

 

だから脳は時間を知り、過去を記憶し、意識を生み出しながら未来へと心的時間旅行する「未来-予期-装置」=「タイムマシン」だとブオノマーノ博士は主張する。

 

 

さらにブロック宇宙論の決定論的な考え方は、量子力学の非局所性(われわれを構成する最小単位の素粒子は、観測されるまでは波のように広がっていて、どこにあるかが決まっていない)と矛盾する。

 

確かに、

 

●この世界の真の姿は「非局所性」ーアンプリチューヘドロンー

 

で考察したとおり、われわれの世界の真の姿は「非局所性」が正しく、空間も時間も派生的なものというのが最新の物理学の考え方だ。

 

ブオノマーノ博士は著書の中で「ブロック宇宙論を支持するものにとって量子力学とは矛盾するのものの、物理法則が決定論的であるかどうかは大した問題ではなく、過去・現在・未来がブロック宇宙すべてに共存するというなら、なされるべき選択はすでになされていることになる」と言っている。

「脳と時間: 神経科学と物理学で解き明かす〈時間〉の謎」 (P262)より

 

この意見に対して私は異をとなえる。

 

この宇宙の過去・現在・未来は誕生したときにすでに存在しているが、それぞれの無数の時間の可能性は非局所的で定まっていない。常にゆらいでいるのだ。

 

だからスポットライト理論を量子力学で書き直すと、次のようになる。

 

量子論的スポットライト理論
量子論的スポットライト理論

 

つまりこの宇宙のさまざまな可能性は宇宙誕生時に生まれているが、瞬間瞬間にどの可能性を選択するかという運命は決まっておらず、ゆらいでいる。どの可能性を選択するかは量子力学的にいえばシュレーディンガー方程式の確率による。

ブオノマーノ博士のような脳神経学者的に表現すると、「無意識」下のニューロンのランダムな発火なのだ。

 

そしてわれわれの身体を動かしたり、何かを知覚しようとする自由意志、またそのときに生じる「意識」「無意識」が選んだ可能性の1つを観測して未来へ進んでいく。その量子論的なストップライトの移動が「時間の流れ」を「意識」に生み出していく。

 

われわれの意識を宇宙を旅するロケットに見立てると、次のような図になる。

量子論的スポットライト宇宙を旅するロケットマン
量子論的スポットライト宇宙を旅するロケットマン

 

次回はいよいよ今回の考察に基づいて「意識」と「無意識」だけで「タイムリープの仕組み」を解明していきたい。

 

ずいぶん回りくどい説明になったと思われるかもしれないが、今回の話をしっかりしておかなければ、次回に誤解を与えかねないからだ。

 

なにせ次回はスピリチュアルの代表である「引き寄せの法則」からはじめようと思う。

 

だが安心して欲しい。

 

最終的には「意識」「無意識」だけで再現性のある実験可能な方法「疑似タイムリープ」を、そしてその先にある「真のタイムリープ」を解説することを約束する。

 

 

Reference:「日経サイエンス2019年12月号(大特集:真実と嘘と不確実性)」