●「雷でタイムトラベルした男(2)」(万物の理論)

2018/3/30

 

「雷」と「万物の理論」イメージ

前回の続き。 

 

Jacob's Ladder was developed by Causal closure of physics.

(ヤコブの梯子は物理的な因果関係を閉じることによって開発された)

 

このフレーズを知っている方はほとんどいないだろが、10年ほど前にネット上で話題になった「梯子の物語」に出てくる言葉だ。

 

前回1990年代のアメリカで、「ジェイコブズ・ラダー」というタイムマシンを作った青年マーカムの話を紹介したが、この話をきっかけにある方からメールをいただいた。

 「人のいない空間の謎(1)」でも紹介しているように私は「梯子の物語」が大好きなので素直にうれしかった。

 

それはさておき、物理学者の見解ではマーカムが作ったのはただの「雷」発生装置で、そんな機械でタイムトラベルができる根拠はないという。

仮に「雷」つまり電気を利用してタイムトラベルが可能になれば、それは現在の物理学が待ち望む「万物の理論(The Theory of Everything)」の完成を意味する。

 

今回は「万物の理論」が完成したならば、どのようにしてタイムトラベルへの道が開かれるのかを考察していきたい。

 

まず昨年発表された「雷」に関する新しい研究成果から。

 

●雷が反物質の雲をつくる -雷の原子核反応を陽電子と中性子で解明-

2017/11/24 京都大学プレスリリースより

 

京都大学の榎戸准教授らの研究グループは、雷が大気中で「核反応」を起こし、その際に発生した「反物質」を観測したという。

 

「雷」という身近な自然現象からはとても想像もつかない「核反応」とか「反物質」というキーワードが並んでいる。

昨年2月に新潟県の柏崎市で発生した雷から、電子の反物質である陽電子が対消滅したガンマ線を検出し、雷に伴うガンマ線が大気中の窒素と光核反応を起こしたことが確認できた。

 

まず「核反応」と聞いて放射能を懸念されるかもしれないが、雷で発生する放射線量はX線検査の2億分の1程度なのでご心配なく(「ガンマ線」wikiより)

 

それより注目したいのは「反物質」だ。

 

「反物質」とは「反粒子を使ったタイムトラベル」で紹介しているように、現在の地球上にはほとんど存在せず、CERN(欧州原子核研究機構)のLHCのような粒子加速器でしか作ることのできないとても珍しい「反粒子」でできた物質だ。

 

そんなものが、まさか雷で生成されているとは夢にも思わなかった。

 

宇宙の誕生時にはわれわれを構成する通常の物質と同じくらいあった反物質が、「なぜ現在ほとんどなくなってしまったのか?」は宇宙の謎の一つだが、身近な雷からサンプルが採取できるとなれば、研究が大きく前進するだろう。

 

 

さて「雷」と「タイムトラベル」の関係は、「時空を歪める霧の謎(3)」で雷雨のときごくまれに見られる発光現象「球電」を中心に一度考察しており、球電の原因と考えられるプラズマの電磁波によって幻覚症状が引き起こされる可能性を紹介した。

 

●ロシアのノボシビルスクで撮影された球電

 

マーカムの実験は残念ながら証拠が残っておらず、彼が体験したタイムトラベルは、ジョイコブズ・ラダーという雷発生装置によって生じた電磁場による幻覚だったのかもしれない。

 

ただ一方で「時空を歪める霧の謎(4)」で紹介しているロシアの科学者チェルノブロフの論文には、電磁場を集中させることによって時空を歪めてタイムトラベルが可能になると記載されている。

 

●「Experiments on the change of the direction and rate of time motion」(時間の作用の方向と速度の変化に関する実験)」Vadim A. Chernobrov

 

そこでもう一度、電気(電磁場)とタイムトラベルの可能性について考えてみた。

 

冒頭でも述べたとおり、現在物理学者が考えているタイムトラベルの方法は「光に近いスピード」あるいは「重力」のどちらかを利用するものだ。電気のエネルギーを使ったタイムトラベルはあまり聞いたことがない。

 

仮にマーカムが電気(電磁場)と重力場をいっしょに統合する方法を思いついたのなら、驚くべきことに彼は物理学者たちが必死で追い求めている「万物の理論」を発見したことになる。

 

「万物の理論」とはこの世に存在する4つの力を統合する究極の理論だ。

 

4つの力とは「電磁気力」・「強い力」・「弱い力」・「重力」で、このうち「電磁気力」・「強い力」・「弱い力」の3つの力は宇宙誕生の瞬間のような超高エネルギー状態ならば統合されると考えられている。

 

でも「重力」だけが3つの力に統合できない。なぜ「重力」の統合はそんなに難しいのか?

 

宇宙誕生のような互いの粒子が密接にくっついてるとき、2つの粒子の距離を無限に近づけていくと、距離の2乗に反比例するという万有引力の法則から重力の強さは無限大になってしまい計算不能となる。

 

これを回避するために「万物の理論」の第一候補とされる「超弦理論」では、粒子を点ではなく長さをもった1次元のひもとし、ある距離(プランク長)以下への接近を避けて無限大の問題を回避している。

※超弦理論について詳しくは「10次元をイラストにしてみた」(超弦理論も徹底解説)を参照。

 

 

さて仮に「重力」と3つの力を統合する「万物の理論」を完成できたとすれば、どのようにタイムトラベルの可能性が開けるのか?

 

現在考えられているタイムトラベル理論で過去にも移動できるとして有力視されているのが、昨年ノーベル賞を受賞者したキップ・ソーン博士の「ワーム・ホール」を使った方法だ。

 

詳しくは「キップ・ソーン博士のタイムマシンが実現?(1)」をご覧いただきたいが、簡単に説明すると時空にトンネルを開けて「現在」の入口からトンネルに入り、「過去」(または「未来」)の出口へと通り抜ける方法だ。

 

トンネルを掘るにしてもまずは入口を開ける必要があるが、時空に穴を開けるのはそう簡単ではない。アイデアの1つとして考えられるのが強力な重力で時空を歪める方法だ。

 

アインシュタインの一般相対性理論によれば、「重力」は時空の歪みだ。

 

重力は時空の歪み
重力は時空の歪み

 

このような膜の上にボールを置いた図がよく「重力」の説明に使われる。

膜が空間を表しており、ボールの質量によって空間が下に沈んでいる。

 

この歪んだ空間の中では光でさえもまっすぐに進むことはできない。

実際に「重力レンズ」(wiki)という現象によって、空間の歪みに沿って光でさえも曲がってしまうことが観測されている。

 

逆に強大な重力をもった物質があれば、次の図のように時空が極端に変形し、壷の底が抜けるように穴を開けることができるかもしれない。

重力で底が抜けるイメージ

どうやって強大な重力を作り出すかだが、「万物の理論」が完成すればわれわれが扱いやすい電磁気力で重力をコントロールできる可能がある。

マーカムのジェイコブズ・ラダーのような電磁波発生マシンで時空の扉を開けることができるかもしれないのだ。

 

ただ世界中の物理学者が「万物の理論」を追い求めて研究しているが、いつ完成するかはわからない。

ホーキング博士はレナード・ムロディナウ氏との共著で「万物の理論など見つからないものかもしれない」と述べている(exciteニュース)

 

ほかに時空の扉を開ける方法はないのか?

 

例えばアインシュタインの有名な方程式「E=mc2」により質量(m)はエネルギー(E)と等価だから強大なエネルギーを時空の1点に集中させてやればよいのではないか?

 

最初に紹介した雷でも生成されるという「反物質」はぴったりかもしれない。

1グラムの反物質が対消滅して得られるエネルギーは90兆ジュールで、スペースシャトルの外部燃料タンク23個分に相当するそうだ(「反物質」wiki)

広島型原子爆弾の核出力が55兆ジュール(「リトルボーイ」wiki)なので、1gでその倍近いエネルギーがある。

 

でも問題はそのエネルギーをどうやって局在した空間に閉じ込めるかだ。限られたせまい空間でなければエネルギーが拡散してしまう。

 

待てよ、時空を歪めるためには強大な重力(エネルギー)が必要で、強大な重力(エネルギー)を作るためには局在した空間が必要で・・・とこれでは堂々巡りだ。

 

やはりもう少しアインシュタインの一般相対性理論を勉強しなければ・・・。

 

 

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