●タイムトラベルの基本

2016/5/11

 

どこでもドアイメージ

 

調べはじめて最初に驚いたのが、有名な物理学者の先生たちが真剣にタイムトラベルについて考えたり議論を重ねていること。すでにSFの話ではないのだ。

さてこのサイトのメインテーマである「過去に戻る方法」の前に、未来へのタイムトラベルについて考察していく。

実は未来にタイムトラベルすることはそれほど難しくない。

大好きな本に「夏への扉」(ロバートハイライン著)というSFがある。詳しくはネタばれになるので書かないが、主人公は冷凍睡眠装置を使って体の老化を遅らせ、数十年後に目覚める。これも立派な未来へのタイムトラベルだ。

アインシュタインの相対性理論を利用してもいい。特殊相対性理論によれば光の速さに近づけば近づくほど時間はゆっくりと流れるし、一般相対性理論によれば、重力の強い場所にいるほど時間の流れは遅くなる。だから未来に行こうとすれば超速いロケットに乗って地球に戻ってくるか(自分の時間だけがゆっくりと流れていたので、戻ってきた先は未来の地球)、超重力の星で何日か過ごして地球に帰還する(同じく自分の時間はゆっくりと流れ、戻った先の地球は何十年も経過している)という2つの方法がある。

この2つの方法は冷凍睡眠装置に比べて現実的ではないかもしれないけれど、例えば旅客機のパイロットは頻繁にスピードの速い乗り物に乗っているので、自転車通勤のサラリーマンよりも非常にわずかな時間ながら未来へとタイムトラベルしているのだ。またヒマラヤのような高地で生活する人たちに比べ、日本の平地で生活している人の方が極わずかに重力の強い場所で暮らしているので、ほんの少しだけ未来にタイムトラベルしていることになる。

反対に過去へのタイムトラベルは・・・これは相当難しいらしい。


過去へのタイムトラベルは「CTC(時間が輪のように閉じた状態)」を利用したり、「無限の長さの宇宙ひも」を利用したりする方法が考案されているが、どちらも理論的にこういう状況があったならという仮定を前提としており、正直とても現実的とは思えない。その中で比較的これならばもしかしたら、というのがキップ・ソーン博士が提唱したワームホールを利用した方法である。

ワームホールは二つの離れた空間を結ぶトンネルで、ドラえもんで例えるとどこでもドアがイメージしやすいかもしれない(ドラえもんはすでにのび太の机の引き出しにタイムマシンをもっているが・・・)。

 

まず、のび太の部屋(A)にどこでもドアを置いて、出口を土管の公園(B)とする。 

AとBにどこでもドアを設置する
AとBにどこでもドアを設置する

 

そして土管公園の出口(B)を光速に近い速さで振動させる。特殊相対性理論から光速に近づくにつれ時間の流れは遅くなるので、のび太の部屋(A)の入り口に比べ、土管公園の出口(B)の時間は遅れていく。 

Bの時間だけが遅れる
Bの時間だけが遅れる

 

この状態でのび太の部屋(A)のどこでもドアに入ると、土管公園の出口(B)から出てきたのび太は過去の世界に行くことができる。

過去へのタイムトラベルが実現!
過去へのタイムトラベルが実現!

 

 

この方法はCTCや宇宙ひもといった何だかよくわからないものを使ったタイムトラベルよりイメージはしやすいのだが、そもそもどこでもドアみたいなワームホールの開発が課題である。しかもこの方法だとどこでもドアを置く前の過去には戻れない。そしてもう1つ解決しなければならないのが「親殺しのパラドックス」だ。

 

「過去にタイムトラベルをして自分の母親を殺してしまった。すると自分は生まれないことになる。その結果タイムトラベルした自分は存在しなくなり、母親が殺されることはない・・・」という過去へのタイムトラベルにつきもののパラドックスが生じる。

 

この解決策としては、母親を殺そうとしても必ずその試みは失敗し、過去は決して改変できないという決定論的な考え方(実は先ほど出てきたキップ・ソーン博士やかの有名なホーキング博士も主張しているが)、このサイトの趣旨からはこっちの説はあまり好きじゃない。

 

他には過去の母親を殺した時点で新たな未来が出現し、母親のいない並行世界と、もともとタイムトラベラーがいた母親の生きている世界の両方が存在するという仮説。この考え方では母親を殺して元いた未来に戻ろうとしても、すでに異なる世界のため、タイムトラベラーは元の未来に戻ることはできなくなる。だから映画「ターミネーター:新起動/ジェニシス (字幕版)」のように、世界大戦の起こらない世界に変えようと過去に戻って悪の根源たるスカイネット(世界大戦の原因となったAI)の破壊に成功しても、未来へ帰った主人公がたどり着くのは、世界大戦を防いで英雄として迎えいれられるべき元の世界ではなく、そもそも世界大戦など起こらず主人公の努力を何も知らない人々が暮らす新たな未来なのだ。

 

でもSFや2chの不思議な経験談やオカルト話に出てくる「過去の世界で起こした行為によって、元いた未来に変化が起こり、自分もその変化を享受した未来へ戻る」という方法はないのだろうか? いわゆる「過去改変」だ。

 

「過去改変」を実現させるための理論を考えるにあたって、まず「時間」について考察してみる。