●「タイムトラベルのパラドックスをすべて解決する新理論」(並行歴史)

2020/6/29

 

並行歴史イメージ

 

昨年末に物理学や数学などのさまざまな論文が掲載されている「arXiv」をあさっていたところ、とても魅力的な論文を発見した。

 

その名も

 

●Time Travel Paradoxes and Multiple Histories(タイムトラベルのパラドックスと並行歴史)

2019/11/25 arXivより

 

概要には、「並行歴史」というアイデアを使ってタイムトラベルのあらゆるパラドックスを解決するという内容が書かれており、さらに興味を引かれた。

 

 

しかし読み進めてすぐに、その難解さにギブアップしてしまった。

 数式はそれほど出てこないのだが、とにかく図の意図を読み解くのが難しいのだ。

※タイムパラドックスの解決より、この論文の図を読み説く方が難しいのではと思ったぐらい。

 

 

そうこうしているうちに半年が過ぎてしまった。

 

でもこの論文のことはいつも頭の隅にあり、そろそろアウトプットしなれければと自らを奮い立たせ、この2~3週間格闘していた。

※少々誇張しすぎだが・・・(汗)

 

 

この度やっと要約できたので、皆さんに紹介してみたい。

※なお「わかりやすさ優先」で書いているので、元の論文とは必ずしも同じ表現ではないことに注意して欲しい。

 

 

パラドックスをすべて解決する画期的な論文

さて、今回の論文は、過去へのタイムトラベルにおける大きな障害である2つのパラドックスをどちらも解決してしまおうという画期的なものおそらくこの論文を紹介するのは日本初だ。

 ※海外ではイギリスの人気科学誌「ニュー・サイエンティスト」などで紹介されている。

●パラドックスのないタイムトラベルが多並行タイムラインで可能

2019/12/13 New Scientistより

 

 

論文を発表したのは、カナダの理論物理学ペリメーター研究所の物理学者ジェイコブ・ハウザー氏と、アメリカのポモナ・カレッジの理論物理学教授バラク・ショシャニー博士

※ショシャニー博士の所属は論文発表時。現在はカナダのトロント大学所属。

 

 

2人は、パラドックスを解決するアイデアとして、タイムトラベルしたときに発生する新たなタイムライン「並行歴史」を提案している。

※日本ではSFアニメ「シュタインズ・ゲート」に登場する「世界線」のイメージがわかりやすいかもしれない。

※ただし「世界線」の本来の意味は、相対性理論において4次元時空を移動する粒子の軌跡のこと。パラレルワールド的な意味はない。

 

 

まず2人の論文を説明する前に、タイムトラベルのパラドックス(以下「タイムパラドックス」)について説明しよう。

 

 

まず注意すべき点として、タイムパラドックスが発生するのは、過去へタイムトラベルするときだ。

未来へタイムトラベルする分には何の問題も起こらない。

 

ちなみに未来へのタイムトラベルは現在の技術でも可能だ。

 

  

未来へのタイムトラベル

光速に近いスピードの宇宙船に乗って宇宙旅行をしたとする。

 

例えば2100年に地球を出発し、光速の99.5%の速さで飛びながら1年間宇宙を旅して地球に帰ってきたとしよう。

 

するとあなたは10年後の2110年の地球に帰ってくることになる。

 

宇宙船に乗っていたあなたは1歳年をとっただけなのに、地球では10年も経過しているのだ。

 

これは、光の速度に近づけば近づくほど時間の進みが遅くなるというアインシュタインの特殊相対性理論によって説明される現象だ。

 

※詳しくは「時間が遅くなる仕組みとは?」を参照。

 

しかし過去へのタイムトラベルは次の2つのパラドックスが発生すると言われている。

 

 

2つのタイムパラドックス

過去へのタイムトラベルで発生するのは「親殺しのパラドックス」「情報起源のパラドックス」だ。

※実際にはまだ誰も過去へタイムトラベルにした人がいないので、あくまで理論上だが・・・。

 

2つのパラドックスについて、私の大好きなSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー 」を例に説明する。

 

 

(1)「親殺しのパラドックス」

※「grandfather paradox(祖父のパラドックス)」や「consistency paradoxes(一貫性のパラドックス)」とも呼ばれる。

 

マーティが過去にタイムトラベルして、自分が生まれる前にパパを殺す。

 

 ↓

 

マーティも生まれないことになってしまうが、それではパパを殺すことができない。

 

だからパパは生き残り、マーティは生まれる。

 

 ↓

 

マーティは成長すると過去にタイムトラベルして自分が生まれる前にパパを殺す。

 

これが無限ループになる。      

 

 

 

(2)「情報起源のパラドックス」

※「Bootstrap paradoxes(ブートストラップ・パラドックス)」とも呼ばれる。

 

ドクが自宅の倉庫に眠っていた古い収納棚からタイムマシンの設計図を発見する。

 

 ↓

 

ドクはその設計図をもとにタイムマシンを開発し、過去にタイムトラベルして、過去の自分にタイムマシンの設計図を渡す。

 

 ↓

 

過去のドクはその設計図を元にタイムマシンを発明し、設計図を倉庫の収納棚にしまう。

 

 ↓

 

タイムマシンの設計図を描いたのは誰か?

 

 

 

次に論文で紹介されている過去へのタイムトラベルを実現させる時空モデルを示しておく。

 

 

過去へのタイムトラベル

アインシュタインの相対性理論において、3次元空間に1次元の時間を足した4次元時空を、光の粒子が過去から未来へと進む軌跡(本当の意味での)世界線を図にしたのが「光円錐(こうえんすい)」だ。

光円錐
光円錐

 

2つの円錐を逆さまにしてくっつけた砂時計のような形をしており、両サイドを光の世界線にはさまれていて、中央を貫く軸線は、下半分の「過去領域」から、上半分の「未来領域」へと進む「時間」を表している。

 

 

回転する宇宙の場合、光円錐は中心から外側に離れるにつれて傾いていき、周囲に「CTC(Closed Timelike Curve)」という「閉じた時間の輪」が形成される。

 

 回転する宇宙によって形成されるCTC
 回転する宇宙によって形成されるCTC


CTC
がつくられると時間の未来と過去がつながってしまい未来へ進んでいたのにいつの間にか過去に戻ってしまう。

CTCによってつながる過去と未来
CTCによってつながる過去と未来

つまりCTCのループを進むことで「過去へのタイムトラベル」が可能になる。


 

しかし残念ながら、われわれの宇宙はCTCが形成されるような回転はしていない。

  

 

CTCによる過去へのタイムトラベルはあくまで机上の空論なのだ。

 

ただしホーキング博士によれば、ミクロの領域ならばCTCが形成される可能性はあるという。

※カシミール効果がその一例(「ホーキング、未来を語る」より)

 

 

だがわれわれが生活するマクロの世界では、物理法則がタイムトラベルをさまたげてしまう。

 

さっきの回転する宇宙をもう一度考えてみよう。

 

時間順序保護仮説の仕組み
時間順序保護仮説の仕組み

上の図で、円の中心近くにいる人はさまざまな経路(赤い線で示した実線や点線による歴史)をとれるが、外側にいくにつれ速度が速くなっていき、取れる経路は限られてくる。

 

 

円のフチ、つまり光速度に近づくと、とれる経路はほぼ1本になる。つまり過去へのタイムトラベルが可能な光円錐が水平に傾く速度では、歴史を変えるようなタイムトラベルは禁止されてしまう。これがホーキング博士の考えた「時間順序保護仮説」だ。

※「CTC」や「時間順序保護仮説」について詳しくは「ホーキング博士とタイムトラベル」を参照。

 

 

やはり過去へのタイムトラベルは不可能なのか?

 

いや、時間順序保護仮説の影響を受けず、過去へタイムトラベルする方法があるのだ。

 

それがワームホールを使って現在の時空と過去の時空を接続して移動する方法だ。

 

 

ワームホールを使った過去へのタイムトラベル

ワームホールは、離れた空間同士を結びつける時空のトンネルとして知られているが、アインシュタイン博士によれば時間も4つ目の次元とみなすことができるので、離れた場所だけでなく、離れた時間も結びつけることができる。

 

過去と未来を結ぶワームホール
過去と未来を結ぶワームホール

タイムトラベルによく利用されるのは、イギリスの物理学者デイヴィッド・ドイッチュとアメリカの物理学者H・デビッド・ポリツァーが考案した、DP空間(Deutsch-Politzer -space/ドイッチュ・ポリツァー空間)と呼ばれるワームホールだ。

 

 

DP空間を使ったタイムトラベルでは、粒子が、タイムマシンで作られた未来のワームホール(未来WH)から、過去のワームホール(過去WH)へ移動すると、未来WHに入った粒子は、過去WHの同じ方向から出てくる。

DP空間(「Time Travel Paradoxes and Multiple Histories」の図1をベースにBTTPが作成)
DP空間(「Time Travel Paradoxes and Multiple Histories」の図1をベースにBTTPが作成)


さらに空間がねじれたワームホールも考案されており、この場合、粒子が、タイムマシンで作られた未来WHに入ると、入った方とは逆の方向(空間的に反転した方向)の過去WHから出てくる。

このねじれたワームホールTDP空間(twisted-Deutsch-Politzer space/ねじれたドイッチュ・ポリツァー空間)と呼ぶ。

TDP空間(「Time Travel Paradoxes and Multiple Histories」の図2をベースにBTTPが作成)
TDP空間(「Time Travel Paradoxes and Multiple Histories」の図2をベースにBTTPが作成)


ただしこのワームホールを使った過去へのタイムトラベルにも問題があり、最初に紹介した「親殺しのパラドックス」の変形版のパラドックスが生じると言われている。

 

それが、アメリカの物理学者ジョセフ・ポルチンスキー博士が考案した、ワームホールに入っていくビリヤードのボールを使った「ポルチンスキーのパラドックス(wiki)」だ。

 

 

「ポルチンスキーのパラドックス」とその解決

ビリヤードのボール白玉未来からのワームホール(WH)を通って、過去から出てくる(赤玉状況を考える。

※未来WHから入って過去WHに出るボールはもちろん同じ玉だが、わかりやすいように色を変えている。

ポルチンスキーのパラドックス1


未来と過去の時間差がほとんどない場合、過去WHから出てきたボール(赤玉)は同じ軌道なので、これから未来WHに入るボール(白玉)とぶつかってしまう。

すると、未来のボール(白玉)の軌道がそれて、過去行きのワームホールに入らないことになる。

ポルチンスキーのパラドックス2

でも未来のボール(白玉)がワームホールに入らなければ、過去WHからボール(赤玉)が出てくることはない、というパラドックスだ。

ポルチンスキーのパラドックス3



しかしハウザー氏とショシャニー博士は、この「ポルチンスキーのパラドックス」がさきほど紹介したねじれたワームホールTDP空間を使って解決できるという。

 

 

その解決方法はこうだ。

 

さっきと同じようにビリヤードのボール(白玉)が未来WHに入り、から過去WHからボール(赤玉)が出てくるが、ワームホールがTDP空間(ねじれたDP空間)だった場合、過去WHから出たボール(赤玉)の向きは反対の軌道になる。

ポルチンスキーのパラドックスの解決1


すると過去WHから出てきたボール(赤玉)は、ちょうどうまいぐあいに未来WHへ入っていくボール(白玉)の軌道を変えて、未来WHに入っていく。

ポルチンスキーのパラドックスの解決2

そしてまたTDP空間により軌道が変化して過去WHから出てきたボール(赤玉)は、うまいぐあいにぶつかってボール(白玉)を未来WHへ送っていく・・・という具合に一貫性が保たれ、パラドックスは解決される。

ポルチンスキーのパラドックスの解決3



さてそれでは肝心の「親殺しのパラドックス」「情報起源のパラドックス」がどのように解決されるか見ていこう。

 

 

 

3つの時空モデル

ハウザー氏とショシャニー博士は、タイムトラベルによって発生するタイムラインの種類により、次の3つの時空モデルを提案している。

3つの時空モデル「Time Travel Paradoxes and Multiple Histories」の図9より
3つの時空モデル「Time Travel Paradoxes and Multiple Histories」の図9より

(a)分岐宇宙

1つ目は、タイムトラベルによってタイムラインが2つに分岐する「分岐宇宙」だ。

分岐宇宙
分岐宇宙

1つの宇宙が、タイムトラベルのたびに2つの宇宙に分岐する。

 

これは1957年にプリンストン大学の大学院生だったヒュー・エヴェレット3世によって考案された「多世界解釈」に基づいている。

※なお本来のエヴェレットの多世界解釈では、タイムトラベルをしなくても量子力学的な観測をするたびに世界が分岐していく。

エヴェレットの多世界解釈
エヴェレットの多世界解釈

分岐前の宇宙は共通の過去を持っているが、分岐後の宇宙はそれぞれのタイムラインに別れ、相互に干渉することはできない。

 

 

(b)並行宇宙

2つ目は、インフレーション理論によって発生するマルチバース(多元宇宙)による「並行宇宙」だ。

 

われわれの宇宙では、宇宙のはじまりの直後に起こったとされるインフレーションはすでに終了しているが、

インフレーション
インフレーション

今もどこかの宇宙ではインフレーションが続いており、あらたな泡宇宙が誕生している。

 

泡宇宙の数は10^500種類あるといわれ、すなわち、ありとあらゆる種類の宇宙が存在する。

 

その中には、われわれのすむ宇宙ととても似通った宇宙が存在し、誕生した時期がずれていたり、重力のわずかな違いにより、タイムラインの進行度が遅い(あるいは早い)宇宙がある。

 

その宇宙に何らかの方法でゲートを作って移動すれば、過去(あるいは未来)へのタイムトラベルが実現するが、現在の物理学ではマルチバース間の移動は難しいと考えられている。 

並行宇宙
並行宇宙

 

 

(C)並行歴史

3つ目は、ハウザー氏とショシャニー博士の2人によってあらたに提案された1つの宇宙の中に、たくさんの異なる歴史をもったタイムラインが存在するという「並行歴史」だ。

並行歴史
並行歴史


並行歴史の最大の特徴は、宇宙が1つだけなので、物質や物理法則などの共通のモデルが適用でき、それぞれの歴史は相互作用できることだ。

 

現在の物理学では分岐宇宙も並行宇宙もそれぞれ独立して存在し、相互作用できない=その間を移動できないと考えられている。

だが並行歴史なら、DP空間やTDP空間のようなワームホールを使って相互に並行歴史間を行き来でき、それぞれの歴史の詳細な部分は異なっていてもお互いの物質は相互作用できる。

 

ただし、「並行歴史」では、それぞれの歴史は相互に干渉しているため、一度タイムマシンの電源をオンにするとすべての並行歴史でタイムマシンの電源が入り、ある並行歴史で電源を切ろうとしても、電源は切れない。

 

 

分岐宇宙と並行宇宙でのタイムパラドックスの解決

まず「親殺しのパラドックス」から考えてみる。

 

「分岐宇宙」では、タイムトラベルによって分岐した宇宙は独立して存在するため、たとえ過去に戻って親を殺したとしても、それは別の宇宙の親だ

 

「並行宇宙」でも同じようにそれぞれの宇宙は独立しているので、タイムトラベル先の宇宙で親を殺しても、元の世界の親には何の関係もない

分岐宇宙と並行宇宙の場合


ただし「情報起源のパラドックス」はやっかいだ。

 

博士1が倉庫の収納棚で見つけた設計図を元にタイムマシンを作り、過去に戻ってもう1つの宇宙に住む博士2に設計図を渡す。

 

博士2は設計図を元にタイムマシンを作って、その設計図を倉庫の収納棚に隠す。

 

だが、「分岐宇宙」でも「並行宇宙」でも「タイムトラベル前の元の世界にあった設計図は誰が書いたのか?」という問題が残る。

情報起源のパラドックスは解決できない


つまり「分岐宇宙」「並行宇宙」のモデルでは「親殺しのパラドックス」は解決できるが「情報起源のパラドックス」を解決することはできない。

 

 

それではいよいよ2人が論文で画期的だと言っている「並行歴史」モデルでのタイムパラドックスの解決を紹介しよう。

並行歴史でのタイムパラドックスの解決

[無限の並行歴史が存在する場合]

無限の並行歴史があり、その中の1つでタイムマシンを発明したアリスのシナリオを考えてみる。

 

並行歴史Aで、はじめてタイムマシンを開発したアリスをアリスAとしよう。

 

アリスAがタイムマシンの開発に成功し、10秒前の過去に戻ろうとしている。

電源を入れ、正常にタイムマシンは動き出した。

しかし10秒前の過去からアリスは現れない。

なぜならアリスAが「まだ」タイムマシンに入っていないからだ。

無限の並行歴史の場合1


並行歴史Aで、アリスAがタイムマシンに入ると、TDP空間を通り、並行歴史B10秒前の過去に戻り、タイムマシンから出てきたアリスAは、10秒前の過去アリスBに遭遇する。

 

もしアリスAがこれからタイムマシンに入ろうとするアリスBを殺した場合、そこでタイムトラベルのチェーンは終了し、「親殺しパラドックス」は起こらない。

無限の並行歴史の場合2


次にアリスBの視点で考えてみよう。

 

アリスB並行歴史Bでタイムマシンの開発に成功し電源を入れたとき、「まだ」彼女はタイムマシンに入っていないのに、タイムマシンからアリスAが出てくる。

 

このときアリスBは、「この歴史は初めてタイムマシンを開発したオリジナルの歴史ではない」ことに気づく。

 

アリスAに邪魔されなければ、アリスBは無事タイムマシンに入り、TDP空間を通って10秒前の並行歴史Cのタイムマシンから出てくる。そしてこれからタイムマシンに入ろうとする並行歴史CアリスCと遭遇するのだ。

無限の並行歴史の場合3

このタイムトラベルのチェーンは無限に続いていくが、本来の意味で初めてタイムマシンを開発したのは並行歴史AのアリスAだ。

 

したがって「情報起源のパラドックス」は解決される。

 

 

次にアリス2020年の未来から1950年の過去へと戻り、祖父であるボブを祖母に出会う前に殺すシナリオを考えてみる。

 

[歴史が1つしか存在しない場合]

歴史が1つしかなければ、ボブ1930年に生まれ、アリス1950年にタイムマシンから現れ、ボブを殺そうとするが、失敗し、アリス1990年に生まれ、アリス2020年にタイムマシンに入る。

 

これの歴史は完全に一貫しており、アリス1950年に戻らない歴史はなくアリスの運命は1つに決定している。

歴史が1つしかない場合

[2つの並行歴史が循環する場合]

次に並行歴史A並行歴史Bがあり、この2つの歴史は相互に循環しているとする。

 

2人のアリス2020年から1950年へ時間を遡り、祖父であるボブを祖母に出会う前に殺すシナリオを考えてみる。

 

並行歴史AのアリスをアリスA並行歴史BのアリスをアリスBとする。

 

2つの並行歴史が存在する宇宙

並行歴史Aでは、ボブA1930年に生まれ、アリスB1950年にタイムマシンから出てきてワニを放しボブAを殺そうとするが、失敗する。

 

アリスA1990年に生まれ、年老いたボブA2010年に、アリスA「1950年にワニを放して彼を殺そうとしたアリスAによく似た女性」の物語を話す。

 

アリスA2020年に、別のより効率的な方法でボブを殺そうと決めてタイムマシンに入る。

 

 

並行歴史Bでは、アリスA1950年にタイムマシンから現れ、ボブBピアノを落として殺そうとするが、失敗する。

 

ボブB2010年に、アリスB「1950年にピアノを落として彼を殺そうとしたアリスBによく似た女性」の物語を話す。

 

アリスB2020年に、別のより効率的な方法でボブを殺そうと決めてタイムマシンに入る。

 

 

殺人方法はそれぞれの歴史で異なるため、2つのアリスの行動は2つの歴史で異なり、ここにアリス自身の「自由意志」が存在する可能性が秘められている。

 

歴史が1つならば、われわれに自由意志が存在する余地はないが、並行する歴史が2つ以上あれば、少なくとも「どんな方法でボブを殺害しようとするか?」はそれぞれの歴史のアリスが自分の意思で決めることができる。

 

 

最後にわれわれの宇宙が果たして「分岐宇宙」、「並行宇宙」、「並行歴史」のどれであるか?を区別する方法をご紹介する。

 

3つの時空モデルを区別する方法

再び無限の並行歴史があり、その中の1つでタイムマシンを発明したアリスのシナリオで考えてみよう。

 

アリスA並行歴史Aでタイムマシンに開発に成功してタイムマシンに入り、並行歴史Bのタイマシンから出てきたとき、これからタイムマシンに入ろうとうするアリスBと遭遇する。

3つの時空モデルを区別する方法

そこでアイスAとアリスBが今までの経験を詳しく話し合ったとする。

 

もし2人の過去に小さな違いがあった場合、3つの時空モデルのうち、2人がいる世界は「並行宇宙」だ。

 

もし2人の過去がまったく同じなら「分岐宇宙」か「並列歴史」のどちらかだ。

 

さらに「分岐宇宙」「並列歴史」かを調べるならば、タイムマシンの電源を切ろうと試せばいい。

 

もし電源が切れたならば、2人のいる世界は「分岐宇宙」だ。

しかしどうしても電源を切ることができなければ、それぞれの歴史が相互作用している「並行歴史」だ。

 

 

今後の課題と展望

ハウザー氏とショシャニー博士の今回の論文は(論文の中で2人も未解決の問題としてあげているが)「並行歴史」物理的メカニズムは説明されていない。

 

しかし2人は、「並行歴史」がタイムトラベルのパラドックスを解決する最も有力な理論で、われわれの「自由意志」の存在も説明すると主張している。

 

2人はこの論文が、他の物理学者や数学者、哲学者に新たな刺激を与えることを期待している。

 

この魅力的な「並行歴史」というアイデア、少なくとも私は刺激を受けた。